| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-067 (Poster presentation)
ラン科の多くは昆虫の訪花頻度が低く、送粉者を直接観察することは難しい。本研究ではサイハイランの開花期間を通してカメラトラップによる送粉者調査を実施した。また、訪花が撮影されたマルハナバチ2種の訪花行動を詳細に分析し、花粉塊の付着との関係を検討した。2020年5月19日~6月16日に金沢大学角間里山ゾーンの広葉樹二次林で、サイハイラン26花序382花を対象としてカメラトラップによる送粉者調査を実施した。カメラトラップにはLtl-Acorn6210を使用し、センサーが訪花昆虫を感知した際、60秒の動画を撮影する設定とした。また、直接観察により4日間隔で花粉塊の状態を記録した。撮影回数の上位種の訪花行動をHovering、Landing、Searching、Feedingに分類した。また花粉塊の付着に関連する行動として、Feeding時にハチの体が花内部の蕊柱の上下どちらに位置するかを判別した。2020年10月に対象花序の結果数を調査した。572カメラ日の観察から5科16種の昆虫が記録され、撮影回数の上位種はコマルハナバチ(20回)とトラマルハナバチ(11回)だった。採餌位置が判別不明な個花での採餌を除いて、前者は蕊柱の上からのFeedingはなく(0%、N=76)、花粉塊の付着は無かった。一方、後者は高頻度で蕊柱の下からのFeedingを行い、(84%、N=34)、3花序では花粉塊の付着も見られた。結果率は1.3%(3花序5果実)で、いずれも花粉塊が付着したトラマルハナバチが訪花していた。カメラトラップを用いた撮影記録に基づく花粉塊の付着、および放課後の結果状況から、本調査地ではトラマルハナバチのみがサイハイランの有効な送粉者として機能していると示唆された。