| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-069 (Poster presentation)
植物は様々な送粉者によって送粉されているが、近年スズメガ媒に特化していると考えられていたサギソウにおいてアザミウマによる送粉が確認され、主要な送粉者による送粉を更に補完していることが報告された。以前トガクシショウマの繁殖について、ハナバチ類による送粉に加えて、キイロハナムグリハネカクシが補完的に送粉していることを観察した。そこで、その他の早春に開花する植物においてもハナムグリハネカクシ、または類似した特徴を持つ甲虫(以下、微小甲虫と総称)が送粉に寄与している可能性があると考え、3月~4月に開花する植物計8種を対象に、微小甲虫が送粉に寄与しているかを明らかにすることを目的として調査を行った。
調査方法は主に、訪花昆虫の観察および採集と開花フェノロジーの記録、袋掛け受粉実験である。今回は、微小甲虫の訪花と受粉実験にて結実が確認できた3種の植物について結果を述べる。
調査地の開花数のピークはキクザキイチゲが3月下旬~4月上旬、カタクリは4月中旬、ワサビは4月の約1か月間と長く、3種で異なった。今回観察された微小甲虫のほとんどはデオケシキスイ属2種で、ハナムグリハネカクシは数匹かつ調査範囲外で観察された。観察された微小甲虫は3月下旬に最も多く、観察期間を通してキクザキイチゲでは102匹と多く観察され、次いでワサビで16匹、カタクリで1匹と偏りが見られた。3種全ての植物で大型の昆虫を排除する荒網処理でも結実が確認され、微小甲虫が送粉に寄与していることが示唆された。以上のことから、デオケシキスイは3月下旬に短期間で大量に発生する消長を示すことが明らかになった。この大量に発生する時期と開花フェノロジーが重なるキクザキイチゲでは特に送粉に貢献していると考えられた。