| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-072  (Poster presentation)

水田において圃場整備と耕作放棄が畦畔の植物-送粉者ネットワークに与える影響
The effect of intensification and abandonment on plant-pollinator networks in paddy fields

*冨田誠之, 平山楽, 丑丸敦史(神戸大学)
*Masayuki TOMITA, Gaku HIRAYAMA, Atushi USHIMARU(Kobe University)

 世界的に、土地利用変化が農業(半自然)生態系における送粉者や動物媒植物の多様性の減少を引き起こしている。日本の水田生態系においても集約的な土地利用である圃場整備事業や耕作放棄によって植物・送粉昆虫が減少していることが報告されている。特に、送粉者の種多様性の減少は、送粉ネットワークのジェネラリスト化を通じて送粉サービスの低下を引き起こしうる。本研究では、水田生態系において圃場整備や耕作放棄が送粉ネットワーク構造に及ぼす影響を研究した。
 阪神地域の里山域に分布する伝統的に管理された水田(伝統地)、圃場整備水田(整備地)、耕作放棄水田(放棄地)を各4地点選定し、各地点で月1回年9回ずつ開花植物と訪花昆虫の種名・個体数を記録した。ジェネラリスト化の程度を評価するために、7つのネットワーク指標を算出した。解析では、整備地および放棄地の送粉者・開花植物の種数、ネットワーク指標を伝統地のものと比較し、送粉者・開花植物種数とネットワーク指標との関係を調べた。また、開花植物の原産地を基準に、各地点の送粉ネットワーク構造を在来/外来ネットワークに分けて、同様の解析を行った。
 解析の結果、放棄地では、送粉者・開花植物種数が有意に少なく、有意なネットワークのジェネラリスト化がみられ、それは送粉者種数および開花植物種数の減少によってもたらされたことが示唆された。
 一方、整備地では、送粉者・開花植物種数が有意に少なく、外来植物種数は有意に多かった。また、有意なネットワークのジェネラリスト化がみられ、それは送粉者種数の減少によってもたらされたことが示唆された。さらに、在来ネットワークは有意なジェネラリスト化が見られたものの、外来ネットワークは有意なスペシャリスト化がみられた。
 以上の結果をもとに、圃場整備や耕作放棄が送粉ネットワーク構造および送粉サービスに与えうる影響について議論する。


日本生態学会