| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-074 (Poster presentation)
鳥類は市街地の緑地含む様々な森林を利用する身近な生物である。また、鳥類からもたらされる生態系サービスの維持を考える上で、森林における鳥類群集の成立メカニズムへの理解が必須となる。鳥類と森林との関係については、森林の分断に伴う鳥類群集の多様度の低下などが示されているが、その多くは大規模な連続した森林において実施された研究であり、鳥類の重要な生息地の一つである市街地での研究はまだ少ない。また、餌資源である液果量との関係について市街地にて行われた研究例は少なく、市街地における餌資源と景観が鳥類群集に与える影響については十分明らかにされていない。そこで本研究では、市街地の森林を対象として鳥類群集と森林の総基底面積などの局所的要因や森林面積などの景観的要因との関係に加え、季節変化を伴う液果量の変化との関係を明らかにすることを目的とした。
つくば市を中心に設定した計18か所の調査地において、月2回の早朝の鳥センサスと、液果数の計測を行った。各調査地に40m×20mの区画を設置し、樹種1本の推定総液果数と各液果カロリー量をもとに、各調査区全体の液果の総カロリー量を算出した。また、毎木調査を行うとともに、調査区を含めた総基底面積、森林面積等を求めた。
鳥類の総個体数、総種数はともに局所的要因、景観的要因が全調査期間を通して強く寄与していた。一方季節変化に着目した場合、液果の総カロリー量と鳥類群集との相関は季節により異なることが明らかとなり、また果実食の鳥類やヒヨドリの個体数については非繁殖期秋にて強く寄与することが示された。以上のことから、鳥類群集全体に対しては、局所的要因、景観的要因が影響を与え、液果量の影響は部分的なものと考えられた。その一方で、市街地で優占する果実食鳥類であるヒヨドリについては、液果をつける樹種の存在が特に重要と考えられた。