| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-075  (Poster presentation)

ヤマトアザミテントウにおける局所適応に寄主の季節消長は関与しているのか?
Does host plant phenology contribute to the local adaptation of a herbivorous ladybird beetle?

*中曽根大輝(山形大学), 松林圭(九州大学), 藤山直之(山形大学)
*Daiki NAKASONE(Yamagata Univ.), Kei W MATSUBAYASHI(Kyushu Univ.), Naoyuki FUJIYAMA(Yamagata Univ.)

 植食性昆虫の地理的集団が異なる寄主を利用している場合、寄主利用能力に関する局所適応が生じることがあり、これは隔離障壁のうち“移入者の生存不能”の発達とほぼ同義である。よって、寄主利用能力に関する局所適応は、異所的条件下で生殖隔離が潜在的に発達する過程であると捉えられる。なお、移入者の生存不能は、昆虫の生理的な寄主利用能力に加え、それぞれの寄主のフェノロジーへの適応という面でも作用することが考えられる。
 ヤマトアザミテントウ(以下、ヤマト)はアザミ類を寄主とする植食性昆虫である。アザミ類は一般的に、フェノロジーを含む様々な形質に関して種間のみならず種内でも変異が大きいとされる。よって、ヤマトの地理的集団が示す局所適応は、自身の生息地の寄主に対する生理的適応に加え、寄主のフェノロジーに対する発生タイミングの同調という面でも生じている可能性がある。
 ヤマトの地理的集団のうち、ミネアザミ(以下、ミネ)を寄主とする青森集団、キタカミアザミ(以下、キタカミ)を寄主とする岩手集団、ナンブアザミ(以下、ナンブ)を寄主とする山形集団および福島集団を対象に行った室内実験では、幼虫の成育能力に関し、特定の集団間で潜在的な移入者の生存不能が相互に発達していることが示唆されている。本発表では、上記の集団を対象に行った、ヤマトの幼虫および新成虫が出現するタイミングおよびアザミ類の資源量の季節変動と開花/枯死時期に着目した野外調査、加えて、葉の質の季節変動を評価するために実施したCN比の予備的測定の結果を報告する。アザミの資源量の季節変動パターンは種間/集団間でやや異なっていたものの、花期・CN比動態・ヤマトの発生タイミングには集団間で明瞭な違いは認められなかった。
 以上より、ヤマトの地理的集団が示す局所適応には、寄主のフェノロジーへの適応は事実上関与していないものと考えられた。


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