| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-081  (Poster presentation)

コバントビケラAnisocentropus kawamurai 幼虫の餌・巣材選択
Preference of caddisfly Anisocentropus kawamurai larvae for leaves as a food resource and portable case material.

*野本将太郎, 河内香織(近畿大学農学部)
*Shotaro NOMOTO, Kaori KOCHI(Kindai Univ.)

水生昆虫の一種であるコバントビケラAnisocentropus kawamurai 幼虫は、落葉を小判型に切り抜き、2枚重ねて可携巣を造る。水生昆虫は窒素含有量の多い落葉を優先的に摂食することが知られる。しかし、落葉の物理的な性質が水生昆虫の摂食や巣材選択に影響するかどうかは明らかではない。本研究では落葉の大型片を巣材に用いるコバントビケラに注目し、摂食や巣材選択に、落葉の硬度、厚さがそれぞれ関係するかどうかを調べるため、飼育実験を実施した。

使用した落葉はイロハモミジ、ケヤキ、アラカシ、ヤブツバキの4樹種である。クリーンカップに河川水と、調査地で採集した4樹種の落葉をそれぞれ1枚ずつ入れ、河川水中の微生物による分解を30反復行った。一ヶ月後回収し、本種の存在によらない落葉分解率を把握するため落葉のみの条件を10反復作成しコントロールとした。本種を投入した条件を20反復作製し、本種の投入による落葉分解率とコントロールの差から本種による摂食率を推定した。飼育実験と同じ条件で二ヶ月間河川水に浸した落葉を用いて硬度の測定を実施した。落葉の厚さの測定は乾燥した落葉を使用した。

摂食率と落葉硬度、落葉の厚さはそれぞれいずれの月も相関が有意に認められないことから、落葉硬度と厚さ以外の要因が摂食に影響していると考えられた。巣材使用数と落葉硬度はいずれの月も相関が有意に認められなかった。巣材使用数と落葉の厚さは、9月と10月に強い負の相関が認められたが、11月では相関が有意に認められなかった。本種の幼虫は若齢期には薄い落葉、終齢期には特定の樹種(本研究ではケヤキ)を優先的に巣材に用いると考えられた。


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