| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-084 (Poster presentation)
シマヘビ(Elaphe quadrivirgata)は全国に広く分布する日本固有種であり、個体数も多い一般的な種である。地域によって両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類をさまざまな割合で捕食し、多くの地域では両棲類を主な餌生物として捕食している。しかし、屋久島では爬虫類のみを、伊豆諸島の只苗島や御蔵島では海鳥の卵や雛など、一部の島環境において食性が変化する例が知られている。また、魚類を捕食する例はこれまで一度も報告がなかったが、2015~2017年に新潟県佐渡島の河川でハゼ科魚類を捕食していたシマヘビが2例発見された。そこで本研究でこの魚食が偶発的なのか、佐渡島では一般的な現象なのかを明らかにすることを目的として、2018~2020年に新潟県佐渡島全域の河川と水田で野外調査を行った。その結果、河川で168匹、水田で54匹のシマヘビを捕獲した。河川で発見されたシマヘビの胃内容39例中15例から魚類が発見された。15例中12例はハゼ科魚類を捕食しており、内訳はシマヨシノボリ、ルリヨシノボリ、シマウキゴリ、スミウキゴリの4種であった。その他、カジカ科アユカケが1例、アユ科アユが2例確認された。水田では15例の胃内容物を確認した。最も多かったのはモリアオガエルで、胃内容物中約8割をカエル類が占めていた。河川においても最も高頻度に捕食されていたのはヤマアカガエルで、胃内容物中約6割をカエル類が占めていた。よって、佐渡島の個体群は、河川と水田において多くの個体群と同じように、両棲類を主な餌生物としていると考えられる。しかし、上記の結果や同じ個体が3回ハゼ食を行っていた例などから、シマヘビによる魚食は偶発的ではなく、河川において魚類を捕食する固有の食性を有する個体や個体群の存在が確認された。また、シマヘビは佐渡島の河川に生息する魚類の中でも、ハゼ科魚類を選択的に捕食している可能性が示唆された。