| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-085 (Poster presentation)
被食者は捕食リスクの時空間的変動に対し防衛形質を示す。単為生殖を行うアブラムシは、仔の表現型を捕食リスクやその代替となる環境要因に対し可塑的に変えることで適応的にふるまっていると考えられている。しかし、どのような環境要因によって仔の表現型を変えるかについてはいまだ未解明な種が多い。真社会性アブラムシのヒエツノアブラムシは、二次寄主植物であるチヂミザサ上で不妊の防衛個体(兵隊)を産出する。本研究ではヒエツノアブラムシの二次寄主植物上で過ごす期間が短いことに着目し、室内操作実験と野外観察によってその兵隊産出要因を検討した。まず、室内で長期にわたり飼育されていたヒエツノアブラムシにおいて兵隊の産出はみられなかった。さらに、低温短日条件(15℃、6L:18D)、高温長日条件(20℃、16L:8D)における飼育においても兵隊の産出は、観察されなかった。これらの結果は、寄主植物上の個体数、個体密度、日長・気温が兵隊の産出に影響しないことを示している。野外観察では、開花した寄主植物上で有翅個体の出現と同時期に兵隊の産出がみられた。このことは、開花による寄主植物の変化や有翅個体の産出、室内では生じない捕食が兵隊の産出に影響していることを示唆している。