| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-088 (Poster presentation)
マダニ類の寄生に対する宿主の耐性は、宿主–マダニ間の相互作用において重要な役割を持つ。これまでマダニ類の寄生に対する耐性については、宿主として哺乳類のみを対象に行われてきた。一方、マダニ類は哺乳類のみならず鳥類、爬虫類、両生類といった多様な宿主を持つ。従って、マダニ-宿主間相互作用をより深く理解するために、哺乳類以外の宿主が持つ耐性に関する知見の収集が求められている。そこで、2018年から2019年にかけて、長崎県対馬に生息している3種のヘビ類(ツシママムシ、アオダイショウ、アカマダラ)について、マダニ類の寄生状況に関する野外調査を行った。また、ツシママムシ(以下マムシ)を用いた簡易なマダニの寄生実験を実験室内にて行った。野外調査においてヘビの体表で確認されたマダニは全てタカサゴキララマダニ(以下マダニ)の若虫であった。捕獲されたマムシのうち、87.5%の個体でマダニによる寄生が確認された。しかしながら飽血しているマダニは一切確認されず、ほとんどが死亡しており、各マムシに寄生しているマダニの平均生存率(生存マダニ個体数/全マダニ個体数)は16.1%と非常に低かった。一方、他の2種のヘビ類に関しては、飽血しているマダニが確認され、また体表で死亡しているマダニは確認されなかった。室内寄生実験では、マムシに寄生した3個体のマダニのうち2個体が寄生から6日以内に死亡し、いずれの個体でも飽血は確認されなかった。以上の結果から、対馬に生息している3種のヘビ類のうち、マムシのみがマダニ類に対し非常に強い宿主耐性を持つことが示唆された。このことから、哺乳類以外の動物のマダニ類に対する宿主耐性がマダニ類およびその多様な宿主の個体群動態に影響を与える可能性が考えられる。