| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-097  (Poster presentation)

飼育実験から分かったシルビアシジミ能登半島北西部亜種の越冬環境条件と生態について
About a hibernation environmental condition and ecology of Zizina emelina terukoae in Noto Peninsula that a feed simulation showed

*木村富至(福井県立大学大学院)
*Tominori KIMURA(School of Fukui Pref. Univ.)

日本の北限に孤立して石川県輪島市に生息するシルビアシジミ能登半島亜種の越冬~羽化までの条件や生態に関しては良く分かっていない。生息地の気象条件に近い状態での越冬実験が必要と考え,越冬条件を日長時間,日中の最高気温と最低気温,積雪の有無,食草の有無,越冬時幼虫齢数の5項目とし,検証課題は①産卵時期と越冬休眠の関係②越冬休眠に必要な気象条件③越冬中の食草の必要性④越冬時幼虫齢数の違いによる生存率⑤越冬休眠状態⑥積雪による生存率⑦休眠打破後の終齢幼虫齢数と成虫の大きさとした.第1回目の実験は2019年7月11日~10月10日までを野外の10月1日~12月31日に相当する気象条件で飼育し、得られた83幼虫を使って10月11日~翌年4月18日まで越冬~1化発生までの実験を行った.第2回目は, 2020年6月4日~9月18日まで野外の9月16日~12月31日と1回目の実験より半月早くして越冬幼虫の齢数や生存率の違いを検証した。
実験結果から,シルビアシジミ能登半島亜種の越冬条件と生態を総合的にまとめると, 9月中旬までに産卵が行われる必要がありそれ以後では12月末までに越冬に必要な3齢幼虫まで成長できない幼虫が多数いて生存率が非常に悪くなる. 12月末には3齢幼虫まで成長し食草や周りの壁に糸で台座を作って静止して越冬体制に入る。越冬期間のエサは不要だが12時間未満の短日長と最高気温が5℃以上で積雪が無いことが十分条件である。休眠打破には12時間以上の長日長と最高気温が平均で10℃以上の日が2週間以上必要で,その後5齢幼虫で終齢となり蛹化し大型の1化が発生する.通常、シルビアシジミの終齢幼虫は4齢なので1齢多いことになるが,これは越冬期間に消耗した体力を回復するための手段と思われる。また、積雪要件が冬の強風により雪が積もりにくい石川県輪島市の海岸でのみ生息している要因と考えられる.


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