| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-100  (Poster presentation)

ニホンヤモリの樹名板利用
Use of Japanese gecko tree name plate

*倉本優輝, 倉本宣(明治大学)
*Yuki KURAMOTO, Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

ニホンヤモリGekko japonicusは人間の生活に身近な存在だが、近年、急速に都市化が進み、隠れ家となっていた古い家屋などが減少し、生息環境が悪化する可能性があるため、東京都の区部では絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。ニホンヤモリは夜行性動物であり、昼間は様々な隙間を隠れ家として利用している。そのうちの1つに、樹名板の裏がある。ニホンヤモリの昼間の隠れ家の選好性、樹名板の利用についての研究はまだ多くは行われていない。そのため、本研究ではいくつかの環境要因とニホンヤモリの樹名板利用との関係を明らかにすることで、ニホンヤモリがどのような環境の樹名板を利用するのかを明らかにすることを目的とした。
 調査地は東京都世田谷区の成城三丁目緑地という国分寺崖線上の約2haの都市緑地で、アボック社製の、樹脂で作られた縦11.8cm、横16.8cm、奥行き1.2cmの樹名板が12か所に設置されていた。2019年8月から2020年10月の間、樹名板の裏を確認し、ニホンヤモリがいるかを確認した。
調査結果より、ニホンヤモリは相対照度の高い樹名板を多く利用する傾向があったが、先行研究より、樹名板内の温度が直接的な要因になっていた可能性もある。また、方角の結果に偏りを無くすために、一部のデータを除いて延べ個体数と方角の関係をみると、南側に約40°の時に延べ個体数が最大になった。ヤモリ類は夜の活動中、より高い体温でいるために、日没に向かって体温を高めることから、正午から日没に向けて太陽が樹名板の正面に来る南西側約40°が最適角であると考えられる。さらに、樹木の直径が大きくなり隙間が大きくなるとニホンヤモリの延べ個体数が減少する可能性があった。本研究で使用した樹名板には元々12mmの奥行きがありそこを利用している。しかし、直径が大きいと、樹名板を木に括り付けるためのばねが緩み、樹名板が傾いてしまい、樹名板内に光が差し込んだり、天敵に見つかりやすくなったりするためと考えられる。


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