| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-103  (Poster presentation)

タヌキはどこにタメフン場を形成するか?
Latrine site selection of raccoon dogs

*渡邉和真, 熊谷南望, 斎藤昌幸(山形大学)
*Kazuma WATANABE, Nami KUMAGAI, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

 多くの食肉目はタメフン場を形成し、それらはさまざまな機能を有している。タメフン場はその機能を発揮させるために、特定の環境に偏って形成されることがある。タヌキもタメフン場を形成し、それらを嗅覚コミュニケーションや採餌場の目印のために利用していることが指摘されている。しかし、タヌキのタメフン場がどのような環境に形成されるかは、定量的には明らかになっていない。本研究では、丘陵地帯においてタヌキのタメフン場が形成される環境を評価することを目的とした。
 山形県鶴岡市の高館山周辺で春(2020年3月から4月)と秋(2020年10月から11月)にルートセンサスをおこない、タメフン場の在地点を記録した。季節ごとに、タメフン場の有無と環境要因(Topographic position index (TPI)、傾斜角、NDVI、植生タイプ)の関係を解析した。タヌキの空間利用を調べるために、2020年7月から11月に春のルートセンサスのルート上にランダムに発生させた67地点でカメラトラップ調査をおこない、タヌキの撮影頻度を入手した。タヌキの撮影頻度とTPI、傾斜角、NDVI、植生タイプの関係を解析した。
 ルートセンサスの結果、春は36個、秋は22個のタメフン場を発見した。解析の結果、タメフン場はいずれの季節でもTPIが高い地点(尾根寄りの地形)で有意に出現する傾向にあった。秋には広葉樹林での出現も有意に高かった。カメラトラップでは、18地点で計49回タヌキが撮影された。解析の結果、タヌキの撮影頻度は緩傾斜の地点で有意に高かった。タメフン場の環境とタヌキの空間利用が一致しなかったことから、タヌキのタメフン場はコミュニケーションのために目立ちやすい尾根に形成されている可能性が示唆された。また、秋の広葉樹林はタヌキにとって重要な餌場であると考えられ、目印としてタメフン場が形成された可能性がある。


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