| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-104  (Poster presentation)

都市公園における中型哺乳類の行動パターン
The Activity Patterns of Medium-sized Mammals in Urban Greenspace

*佐々木翔哉, 大澤剛士(東京都立大学)
*Shoya SASAKI, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.)

近年、人口増加や都市への人口集中に伴い都市開発が行われ、都市部の土地利用や景観は大きく変化してきた。一般的に都市開発が行われると緑地が減少し、さらに分断化、小面積化する。そのため生態系に様々な影響を与えるが、そのような都市環境にも様々な中型哺乳類が生息する。これらの中型哺乳類は、人為的な影響に反応することで都市環境特有の行動を示す可能性がある。そこで本研究では、都市環境に生息する中型哺乳類がどのような行動パターンをしているのか自動撮影カメラを用いて明らかにすることを目的とした。

調査は、2020年10月1日から2021年1月31日の間、多摩丘陵および世田谷区に位置する8つの都市公園において行った。カメラは、各都市公園それぞれ3-4つの計27台を獣道や林内、作業道等に設置した。撮影期間のうち10-11月を秋季、12-1月を冬季とし、データはそれぞれの都市公園毎に分けた。そしてほとんどの調査地で確認され、撮影回数上位4種となった中型哺乳類(タヌキ、アライグマ、ハクビシン、ネコ)における100カメラ日あたりの撮影頻度指数RAI (Relative abundance index, 撮影頻度指数 =(撮影回数/カメラ稼働日数)×100カメラ日)を求め、さらに最も多く撮影されたタヌキとアライグマの日周活動パターンを解析した。

結果、中型哺乳類上位4種全体のRAIは秋季95.6、冬季64.8と減少した。種ごとにRAIを比較すると、タヌキ、アライグマ、ハクビシンの値は秋冬間で減少し、ネコは増加した。タヌキは複数の都市公園で昼間に行動する個体が撮影され、都市化の最も進む調査地で昼間の行動が多かった。また、秋冬間では昼間の撮影が減少した。アライグマは昼間に行動する個体は一度も撮影されず、完全な夜行性の行動を示した。結果から、都市の中型哺乳類は秋冬間で行動の活性が減少すると考えられる。また、タヌキは場所によって時間的な行動パターンが一部変化する可能性がある一方、アライグマは大きな変化はしないと考えられる。


日本生態学会