| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-106 (Poster presentation)
体サイズの同類交配に関わる進化学的事象の理解には、その同類交配がどのようなメカニズムで生じているかを解明する必要がある。例えば、繁殖能力の高い体の大きなメスを獲得するオス間競争において体の大きなオスが有利であることは、体サイズの同類交配をもたらす主要なメカニズムである。しかし、猛禽類の体サイズの同類交配では異なるメカニズムが働いている可能性がある。なぜなら鳥類のメスは昆虫や魚類と比して産卵数が少ないので繁殖能力の個体差も小さいから、そして猛禽類では小さなオスが選択的に有利であると考えられているからである。我々はフクロウの一種であるリュウキュウコノハズクの長期研究個体群を用いて、同類交配の生成メカニズムの解明を試みた。解析には778個体のデータを用いた。翼長に関して有意な同類交配が生じていることが明らかになった。その有意性は、サイズの似た者同士が受動的に出会いやすいという状況を考慮したうえでも有意性が維持されていた。ゆえに、翼長に関して積極的に配偶相手を選ぶことで同類交配が生じていることが示唆された。また、縄張りを所有する個体が変わった際に、その変化前後で所有者の翼長に有意な違いはなく、翼長が個体間の争いにおける有利さに寄与しないことが示唆された。さらに、翼の短いオスは多くのリクルートを残すことが示唆された。また定着が早いメスは有意ではないものの翼が短い傾向にあった。本種は、オスが縄張りを先に獲得しそこにメスが定着することでつがいが形成される。したがって、リュウキュウコノハズクはオスではなくメスが積極的に小さなオスを配偶相手に選び、体の小さなメスがその選択において有利であることで、体サイズの同類交配が生じている可能性がある。小さなメスが小さなオスを選ぶという説明は、大きいオスが大きいメスを選ぶという従来の説明と対をなすものであり、体サイズの同類交配が生じるメカニズムとして新しい。