| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-108 (Poster presentation)
“社会”は様々な分野で様々な定義が存在する。生物学では、“同種他個体間のあらゆる活動”という定義がよく用いられる。この広義の定義は、研究者が想定していないユニークな社会を見逃さないようにするのに役に立つ。これまで、高度な社会を持つ霊長類をはじめ、多くの動物で膨大な社会の研究が行われてきたが、「いかにして社会は誕生するのか?」という問いの決定的な答えは得られていない。近年、社会性が低いという爬虫類の特性が、解決への糸口として期待されている。爬虫類の中でも最も社会性が乏しいヘビは、社会の起源を解明するための最適な研究対象の一つとなりうる。しかし、ヘビにおいて秩序がある社会が野外で定量的に示されたことはない。我々は、沖縄島の砂浜での4年間の野外研究により、ウミガメを採餌するヘビ(アカマタ)が秩序ある社会行動を獲得していること発見した。ルートセンサスと定点カメラ撮影で得られたアカマタの個体間相互作用は、以下の5つのタイプに分けられた。1,なわばり制:ウミガメの産卵巣上でコンバットダンス(儀式的闘争)によって他個体を排除して、餌資源を防衛した。2,順位制:産卵巣の占有者に攻撃するか否かは相手によって異なった。その意思決定は、相手のにおいに基づいた個体認知が関係していると考えられた。3,順番待ち行動:占有者に攻撃せずに離れたヘビは、相手が食べ終わるまで近くで数時間以上待機した。4,モジュール性(社会的な集団による採餌は、餌の発見や処理の効率を一個体で行うよりも飛躍的に高めること):特定の個体が産卵巣で採餌することで、地中の卵群まで通じるトンネルが形成される。これを利用することで、その他の多くの個体が大きな利益を得た。5,回避行動:産卵巣で孵化幼体を捕獲すると、それを咥えたまま植生帯内へと持ち去った。これは、他個体との過度な接触を避けるためと考えられた。