| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-111  (Poster presentation)

ショウジョウバエの一遺伝子行動多型における表現型相関とその遺伝基盤
Phenotypic correlation and its genetic basis in single-gene behavioral polymorphism of Drosophila melanogaster

*桂優菜(千葉大・院・理), 田中良弥(名大・院・理), 佐藤光彦(東北大・院・農), 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Yuna KATSURA(Grad. Sci., Chiba Univ.), Ryoya TANAKA(Nagoya Univ.), Mitsuhiko P. SATO(Tohoku Univ.), Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

生物個体には無数の形質が存在する。こうした形質のうち多くは、単独で適応度に影響を与えるため他の形質とは独立に進化してきている。一方、一部の形質は、当該形質のある表現型の適応度が他の形質の表現型の値に依存して変化する。このような形質は複合適応形質と呼ばれ、複数の形質の表現型が連動したようにみえる状態(表現型相関、表現型統合)が進化してくる。複合適応形質は、単一で機能する形質と比べ、大きな生態的な機能を有することが多く、種分化などの進化的動態や個体群動態などの人口学的動態にも大きな影響を与えると考えられている。しかしながら、その遺伝基盤はほとんどわかっていない。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)には、幼虫の採餌行動に関する遺伝的多型が知られており、よく動き回りながら採餌をするRover型とあまり動き回らないsitter型が存在する。この行動多型は、foraging遺伝子に支配された単一遺伝子多型であるにも関わらず、表現型間には活動量以外にも変異のある可能性が指摘されている。本研究では、キイロショウジョウバエの採餌行動多型において幼虫と成虫のさまざまな形質を型間で比較することで表現型相関の実態を明らかにするとともに、foraging遺伝子の発現量に影響を与える原因変異を当該遺伝子の転写制御領域から網羅的に探索することを目的とした。まず、Rover型とsitter型の幼虫と成虫を用いて活動量や行動的な大胆さを定量した。大胆さは幼虫と成虫で一貫してRover型の方がsitter型よりも高かった。一方で、活動量は、幼虫ではRover型で高く、成虫ではsitter型で高かった。これは、本種の場合、活動量は必ずしも発生段階を通じて一貫しないことを意味している。つぎに、foraging遺伝子の転写調節領域において転写因子の結合確率に影響する配列変異を探索したところ、2つの候補SNP部位が見つかった。これらの結果は、表現型統合の実態についてSNPが転写因子に影響を与えている可能性を示唆している。


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