| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-112  (Poster presentation)

真社会性アブラムシのドーパミン合成に関する遺伝子発現量のカースト間比較
Comparing gene expression of dopamine synthesis genes between castes in a eusocial aphid Ceratovacuna japonica

*須藤啓(長大院・水環), 頼本隼汰(基生研), 重信秀治(基生研), 服部充(長大院・水環)
*Kei SUDO(Nagasaki Univ.), Shunta YORIMOTO(Res. Inst. NIBB), Shuji SHIGENOBU(Res. Inst. NIBB), Mitsuru HATTORI(Nagasaki Univ.)

利他行動の進化を理解するために、これまで主にアリ・ハチ類やシロアリ類を用いて、その生理学的背景が明らかにされてきた。しかし、昆虫全体で共通して利他行動に関係する生理学的背景は、他の社会性昆虫でその生理学的背景がほとんど解明されていないことから明らかにされていない。そこで、不妊の防衛個体(兵隊)を1齢で産出する真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシにおける生体アミン類の生産に関わる遺伝子の発現量をカースト間で比較し、その利他行動(防衛)の生理学的背景を明らかにしようと試みた。本研究では、アリ・ハチ類やシロアリ類の利他行動の変化に影響することが分かっている生体アミン類のドーパミンに着目し、ドーパミン合成経路におけるチロシン水酸化酵素の産生に関わるTH遺伝子とドーパ脱炭酸酵素の産生に関わるDDC遺伝子(DDC1、DDC2)の発現量を1齢通常個体と兵隊間で比較を行った。その結果、これらの遺伝子の発現量はカースト内で大きくばらつき、カースト間で有意な差はみられなかった。このことは、本種における利他個体(兵隊)の利他行動(防衛)にドーパミン量が関係しておらず、アブラムシにおける利他行動(防衛)がアリ・ハチ類やシロアリ類と異なる生理学的背景によって調節されている可能性が考えられた。


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