| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-124  (Poster presentation)

後から来てももう遅い?ニホンホホビロコメツキモドキの産卵場所を巡るメス間闘争
No chance for intruders? The prior residence effect on female-female combat for oviposition site in Doubledaya bucculenta (Coleoptera: Erotylidae)

*宮崎雄太, 土岐和多瑠(名古屋大学)
*Yuta MIYAZAKI, Wataru TOKI(Nagoya Univ.)

 産卵場所をめぐるメス間闘争は、産卵資源が制限的な種や、産卵コストが大きな種で見られる。特に、幼虫の移動性が低い昆虫の場合、産卵場所は幼虫の生存や成長に大きく影響するため、闘争の勝敗は母親の適応度に直結する。その勝敗は、一般に、体サイズなどの資源を保持する能力(RHP)と、資源の価値(RV)に影響される。産卵資源を確保している先住個体は、侵入個体よりも資源にコストを費やしており、RVが高く、勝ちやすい(先住効果)。しかし、昆虫のメス間闘争は研究例に乏しく、闘争の有無や勝敗に影響する要因について未解明な部分が大きい。
 甲虫の一種ニホンホホビロコメツキモドキ(ホホビロ)のメス成虫は、発達した大顎で枯死直後のメダケ節間に穿孔して空洞内に産卵する。野外において枯死直後の節間はわずかしか発生せず、節間1本から1頭のみが羽化するため、産卵資源は制限的である。加えて、産卵に長時間を要するため、産卵コストが高いといえる。故に、ホホビロのメスは産卵場所をめぐって闘争するかもしれない。その場合、すでにコストを費やしている穿孔中の個体はRVが高く、先住効果が見られると予想される。
 本研究は、ホホビロのメスが節間をめぐって闘争するかどうかと勝敗に影響する要因を解明するため、まず、メスに作成途中の産卵孔のある節間を与えたところ、産卵孔を再利用して産卵した。次に、穿孔中の個体(先住個体)に他個体(侵入個体)を接触させ、それぞれの行動を観察した。その結果、メス同士は産卵孔をめぐって闘争し、先住個体と大型個体が勝利しやすかった。すなわち、ホホビロのメス間闘争の勝敗はRHPとRVの両方に影響され、先住個体は体サイズによらず産卵資源の防衛に成功しやすい一方、大型の侵入個体は産卵資源の奪取に成功しやすいことが示唆された。


日本生態学会