| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-125 (Poster presentation)
近年,近縁種の排他的な分布の要因として,配偶過程において生じる異種間での負の性的相互作用,すなわち繁殖干渉が重要だと指摘され始めた.ある2種の間に対称的な繁殖干渉があるとき,少数派は排除されると予測される.
西日本には,トノサマガエル属の2種(亜種を含む),トノサマガエルとナゴヤダルマガエルが生息している.ナゴヤダルマの生息域は,そのほとんどがトノサマと重複しており,トノサマとナゴヤダルマ間では包接が起きることがある.
本研究では,トノサマとダルマ間の繁殖時の相互作用について,近縁他種存在下の繁殖様式を随時観察することにより,トノサマガエル属間の繁殖干渉の実態を検証した.
トノサマとダルマの繁殖期,滋賀県立大学ライシメータおよび室内にて19時から明け方まで実験を行った.室内では,ライシメータ周囲の環境音,トノサマのコール,ダルマのコールをランダムに流した.水中に小型蚊帳(1.1*0.8m2)を浮かべ,その中にトノサマ・ダルマの雄1個体ずつとトノサマかダルマの雌を1個体,合計3個体となるように投入した.赤外線カメラで録画し,配偶行動を観察して解析した.
解析の結果,トノサマ・ダルマの雄は自個体の近くで発生した振動に向かって追尾することがわかった.すなわち,雄の追尾行動は,雌がおこした振動だけでなく,他個体雄がおこした振動,あるいは風などによる振動などに反応して行われ,振動の発生源に接近した.
トノサマ・ダルマの雄は,いずれも自種の雌だけでなく,他種の雌に抱接した際にも,後脚で雌の腹部を蹴って刺激する産卵を促す行動を示した.トノサマ雄がダルマ雌に抱接した場合,雄の産卵促し行動によってダルマ雌は産卵し,その卵は受精していた.しかし,ダルマ雄がトノサマ雌に包接した場合,腹部を蹴っても包接雌は無視して,直後の産卵は生じなかった.その後,明け方にその包接雌は産卵したが,卵は未受精であった.