| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-126  (Poster presentation)

奥日光におけるモモジロコウモリの糞を用いた食性分析
Food analysis using feces of Myotis macrodactylus in Okunikko

*中村夏菜(筑波大学), 安井さち子(つくば市大角豆), 上條隆志(筑波大学)
*Kana NAKAMURA(Tsukuba Univ.), Sachiko YASUI(Tsukuba City), Takashi KAMIJO(Tsukuba Univ.)

食虫性コウモリは、一晩に大量の昆虫類を捕食するため、昆虫類の個体数制御などの重要な生態系サービスを担うことが示唆されている。しかし、コウモリは夜行性かつ飛翔可能なため、調査観察が難しく、食性などの基礎的知見が未だ不足している。本研究が対象とするモモジロコウモリは、水域を主な飛翔環境とするが、本種においても詳細な食性は未だ明らかでない。そこで本研究は、モモジロコウモリの食性を明らかにすることを目的とした。コウモリに関する研究が蓄積されている奥日光を調査地とし、モモジロコウモリの糞を採集した。また、昆虫相を把握するために、渓畔林と林内にてマレーズトラップを設置した。採集した糞は、内容物を目視で形態的に識別し、採餌された昆虫を目レベルまで同定、および16S rRNA領域を対象に、DNAメタバーコーディング法を用いて可能なレベルまで同定し、食性および季節性の有無を検討するため、NMDS解析を実施した。また、採餌場所を検討するため、昆虫相と餌構成を比較した。その結果、昆虫相については、林内と比較し、渓畔林において水生昆虫を含めた多様な分類群が採集された。形態的手法による食性分析では、双翅目、毛翅目、鱗翅目、鞘翅目が多く出現した。一方、分子的手法においては39科58属12種の餌生物が確認された。種レベルでの種組成をみると、ヒゲナガカワトビケラなどの河川に生息する種が検出された。これらのことから、モモジロコウモリは飛翔場所だけでなく、実際に水生由来または水域に生息する昆虫を採餌していると考えられる。


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