| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-129 (Poster presentation)
鳥類の翼には、飛翔をはじめとして様々な機能があり、種間での形状の違いが各種の生態や生活史と関連していると考えられる。しかし、翼形のバラツキの大部分が系統によって説明され、飛翔形態と翼形との関連については検出が難しいことが示されている。一方で、最近の研究で翼の動的な形質が体重や飛翔形態と強く関係することが示され、鳥類各種は飛翔形態や体サイズに対応して翼の可動域を変化させていることがわかっている。しかし、翼端形状と生態との関連や、飛翔時の翼端形状の変化の影響については検討が不十分である。以上より、本研究では、翼端形状と翼の可動域が、生態的要因や体サイズの影響下で飛翔に与える効果を明らかにする。翼端形状について、86種の翼標本画像を用いて、ランドマーク法により形態解析を行った。この結果と、生息環境、渡り性、食性、体長、体重の各項目との関連を評価したところ、翼端の切れ込み形状が生息環境、および渡りの有無によって異なっていた。また、14種の鳥類冷凍資料について、翼の肩、肘、手首、手根中手骨の遠位端(以下、中手骨関節)の各関節の可動域を計測し、生態的要因、体長と体重、および翼のアスペクト比、羽ばたき周波数との関連を解析した。その結果、中手骨関節端の可動域は、屈曲についても体重との関連が示され、指先の動きが体サイズに関係していることが明らかになった。さらに、手首関節の屈曲可動域と最大の展開角度について、羽ばたき周波数と関連があった。一方で、これまで飛翔形態と関連するとされた手首と肘の連結運動による翼全体の展開について、羽ばたき周波数との関連は見られなかった。従って、羽ばたきのパターンは手首関節の可動域と関連していることが示唆された。これらの結果は、翼遠位の関節の可動域が翼端形状を変化させることで、翼端形状がもたらす操縦性による生息環境や体サイズに応じた飛翔を可能にすることを示唆する。