| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-144  (Poster presentation)

非繁殖期におけるアブラボテ属2種の擬似繁殖行動について
Pseudo-reproductive  behavior of two Tanakia species  in non-breeding season

*西野大輝, 西田隆義(滋賀県立大学)
*Daiki NISHINO, Takayosi NISHIDA(Siga prefecture Univ.)

タナゴ類はコイ科の淡水魚で生きた淡水二枚貝に産卵する特殊な繁殖習性を持つ。タナゴ類の繁殖に関する研究は数多く行われてきたが、非繁殖期におけるタナゴ類の行動に関する研究はほとんどない。本講演では、非繁殖期にもかかわらずアブラボテとヤリタナゴが淡水二枚貝に対して擬似繁殖行動を行い、カネヒラの繁殖行動を阻害することを報告する。
調査地は滋賀県北部の農業用水路マスで、調査期間はタナゴ類の繁殖期と非繁殖期を含む2020年5月下旬~11月中旬で、調査は月に一回、昼間に行った。3種の二枚貝(マツカサガイ、タガイ、カタハガイ)を1個体ずつ水中カメラで撮影した。繁殖行動の分類は北村(2020)に基づいた。ただし、ヤリタナゴとアブラボテのオスは非繁殖期にもかかわらず北村(2020)に記載されていない放精と似た行動を行ったので、この行動は擬似放精行動とした。
アブラボテとヤリタナゴは繁殖期だけでなく、非繁殖期にも3種の二枚貝に対して視察行動を行った。特にアブラボテは、非繁殖期にもかかわらず3種の二枚貝に対して頻繁に視察行動を行い、その頻度は繁殖期よりも高かった。これに対し、カネヒラは繁殖期にだけカタハガイに対する視察行動を行った。繁殖期には、アブラボテのメスはマツカサガイに対してだけ擬似産卵行動を行い、ヤリタナゴのメスはタガイに対してだけ疑似産卵行動を行った。しかし、非繁殖期には、両種のメスは3種の二枚貝に対し疑似産卵行動を行ったが、マツカサガイ、カタハガイに対するその頻度はアブラボテのほうがヤリタナゴよりも高かった。非繁殖期に、アブラボテのオスは3種の二枚貝に対して擬似放精行動を行ったが、ヤリタナゴのオスはマツカサガイとタガイに対しだけ疑似放精行動を行った。
非繁殖期におけるアブラボテ・ヤリタナゴの擬似繁殖行動は、カネヒラのカタハガイに対する繁殖行動を強く阻害した。


日本生態学会