| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-145  (Poster presentation)

営巣樹洞をめぐる闘争行動の定量評価の実験的試み:夏鳥と留鳥の近縁種間比較
An experimental approach to quantify fighting behavior in nest-hole competition: comparison between migrant and resident birds

*佐々木未悠(弘前大学大学院), 高橋雅雄(岩手県立博物館), 蛯名純一(おおせっからんど), 東信行(弘前大学)
*Miyu SASAKI(Hirosaki Univ. graduate school), Masao TAKAHASHI(Iwate Pref. Mus.), Junichi EBINA(Oosekkaland, NPO.), Nobuyuki AZUMA(Hirosaki Univ.)

 鳥類にとって営巣環境は繁殖に不可欠な資源であり、特に樹洞営巣性種は数的に限られた樹洞を利用するため、それをめぐる種内および種間競争が頻繁に生じる。既存の樹洞しか利用できない二次的利用者の間では、①入口に対して体サイズが小さい種のみが利用できること、②体サイズが大きい種が競争に有利であること、③先住効果を得やすい留鳥が競争に有利であること、の3原則に従って序列的な種間関係が形成される。そのため、特に渡り性の種は、先住する他種から巣穴を略奪し維持する必要があり、競争を勝ち抜く何らかの行動的特性を進化させたと予想される。
 体サイズがほぼ同程度の同属近縁2種(渡り性の夏鳥であるニュウナイスズメと留鳥のスズメ)を対象とした自然条件での野外観察において、①卵排除や子殺しなどの種内および種間の繁殖妨害が頻繁に起きていること、②巣への侵入者に対してニュウナイスズメはより強い防衛行動を示し、侵入者を早く追い払うことが明らかになった。しかし、これら巣への侵入は時期や巣間で発生頻度に大きなばらつきが見られ、定量的な評価は困難であった。
 そのため本研究では、上記の近縁2種の防衛行動を定量的に比較評価するために、野外での剥製提示実験を行った。青森県三沢市の疎林において、2020年の繁殖期(6月~7月)に、侵入者を想定した鳥類剥製5種(樹洞営巣種4種:対象2種と、相対的に大型なコムクドリ、小型のシジュウカラ、および非樹洞営巣性のアオジ)を営巣巣箱上に提示し、各営巣つがい(ニュウナイスズメ7巣、スズメ6巣)が示した防衛行動を記録した。その結果、自然条件での野外観察と同様に、ニュウナイスズメの防衛行動はスズメよりも明らかに攻撃的であった。すなわち、営巣環境の競争において、夏鳥であるニュウナイスズメは留鳥の近縁種よりも強い闘争性を示すことが明らかとなった。


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