| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-149  (Poster presentation)

モンゴルに生息する草食獣の行動解析: 移動生態の解明に向けて
Behavior analysis of large herbivores in Mongolia for understanding their movement ecology

*野田凪沙(鳥取大学), 伊藤健彦(鳥取大学), 菊地デイル万次郎(東京工業大学), Buyanaa CHIMEDDORJ(WWF Mongolia), Munkhbat UUGANBAYAR(WWF Mongolia), Fei PENG(Tottori Univ.), 坪充(鳥取大学), 恒川篤史(鳥取大学)
*Nagisa NODA(Tottori Univ.), Takehiko Y. ITO(Tottori Univ.), Dale M. KIKUCHI(Tokyo Institute of Technology), Buyanaa CHIMEDDORJ(WWF Mongolia), Munkhbat UUGANBAYAR(WWF Mongolia), Fei PENG(Tottori Univ.), Mitsuru TSUBO(Tottori Univ.), Atsushi TSUNEKAWA(Tottori Univ.)

野生動物の移動生態の理解は困難だが、観測機器の発展が詳細な行動推定を可能にしつつある。継続的な行動推定は、生息地選択や長距離移動の要因と考えられる採食効率推定も可能にする。そこで、モンゴルの草原地帯を長距離移動する草食獣の移動生態の解明に向けた、行動分類手法の確立を目的とした。2019年10月にモンゴル南部で家畜ヤギ2頭の首に3軸加速度計とカメラを装着し、6時30分から18時30分の間、加速度データ(25Hz)と動画(30分おきに1分間)を約3日間記録した。1頭の1日分(24分間)の動画を目視で確認し、1秒ごとの行動を休息、反芻、移動、採食、その他に分類した。また同時間帯の3軸の加速度データから、動的加速度の合計値(overall dynamic body acceleration, ODBA)と首の傾斜角を算出した。この2変数を用いた2階層からなる行動分類を試み、1階層目では、ODBAにより小さな動き(休息・反芻)と大きな動き(移動・採食)に分類した。2階層目では、休息と反芻を再度ODBAで分類し、移動と採食は首の傾斜角で分類した。解析時間単位を1-8秒平均に変え、ロジスティック回帰分析(加速度データと目視分類の対応あり)とクラスター分析(加速度データのみ使用)の判別率を比較した。ロジスティック回帰分析の最も正判別率が高い時間単位ではすべての行動を88%以上で分類でき、行動観察データを必要としないクラスター分析でもほぼ同等の結果が得られた。この分類手法により、動画のない時間帯も含めた詳細な行動変化や行動時間配分の推定が可能になり、本研究に用いたヤギでは、採食と移動の割合が大きい時間帯(11時半―18時ごろ)と、休息と反芻の割合が大きいそれ以外の時間帯に分かれることが示された。長時間の行動観察が不要で、直接観察では区別が難しい反芻と休息も分類できる本手法は、消化効率推定も含む野生動物の採食効率推定を可能にするだろう。


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