| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-151 (Poster presentation)
植物の成長量は利用可能な土壌水分量に大きく依存している。その土壌水分量は気象条件や土壌組成、土壌表面の状態で変化する。土壌表面に礫があると、土壌水分量が増加する可能性が先行研究で示されている。ただ、礫の存在下での土壌水分量の変化が、植物の成長や個体間競争に影響するかは明らかではない。本研究は、土壌表面の礫の存在が植物の成長に与える影響を、二つの圃場実験で検討した。実験には、1800 mlの土が入った直径18 cmの鉢を用意し、長径約2 cmの発泡ガラス製の礫とホソムギ(Lolium perenne)を用いて、土壌表面の礫層が、植物1個体に及ぼす影響(実験1)および複数の植物個体に及ぼす影響(実験2)を評価した。個体間の競争への影響は、複数の植物体重量を鉢ごとの平均値にし、個体数の違いに対する平均植物体重量の差を競争の強度として扱って評価した。
実験1では、礫があると土壌水分量は多かった。植物個体重も礫があると大きかった。実験2では、植物の個体数が増えると、礫がある場合とない場合の土壌水分量および植物個体重の差が小さくなった。
本研究の実験で土壌水分量が変化する要因は、土壌からの蒸発または植物の蒸散の二つである。1個体の栽培実験時には、礫により土壌表面からの蒸発が抑制され、土壌水分量が増加したことが示唆された。そのために、礫の存在下の植物はより大きく成長したと考えられる。しかし植物の個体数が増えると蒸散量が増加し、礫による蒸発の抑制の影響が小さくなることが示唆された。以上から、土壌表面の礫によって植物の成長量が増加する可能性が示された。また、植物の個体数が少ない場合には、礫によって個体間の競争が緩和されることも示唆された。ただ、植物の個体数が増えて密度が高まると、礫によって成長量の増加が見られなない場合もあった。よって植物の成長に対する礫の影響は、植物の密度によって変化すると考えられる。