| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-154  (Poster presentation)

一回繁殖型多年生草本オオウバユリの開花臨界サイズの集団間変異の要因の特定
Identification of factors of variation in sizes for flowering among populations of monocarpic perennial plant, Cardiocrinum cordatum var. glehnii

*芳賀奨平, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Shohei HAGA, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Grad. Env. Sci.)

オオウバユリは一回繁殖型の多年生植物であることから同じ集団で見られる開花個体は前年とは異なる個体である。Hayafune et al. (2019)は北海道内の23集団に関して開花個体サイズ(花数や地際直径)には集団間変異がある一方、集団内では、開花個体が毎年異なるにも関わらずその特性が安定していることを報告している。オオウバユリは、種子発芽から鱗茎に資源を蓄えながら一葉個体で経年成長の後、複数葉のロゼット個体となり、毎年ロゼット葉の枚数を増加させ開花に至る。そこで、23集団の中から開花個体サイズが顕著に異なる3集団(千歳、北大、石狩)に関して4~7枚葉のロゼット葉個体を用いて開花臨界サイズ(栄養成長から開花に移行するときの生育段階)を調べたところ、開花個体サイズが小さい千歳では4枚葉の個体の大半が開花の準備をしていた一方で、開花個体サイズが比較的大きい石狩や北大では6枚葉以上に成長するまで開花準備が認められず、開花臨界サイズが異なることがわかった。本研究は、開花臨界サイズが集団間で異なるのは、栄養成長時に個体が1年間に蓄える資源量に集団間で差があるためと考え、調査を行った。
個体が蓄える資源量は、葉の枚数に加え葉面積の大小とも関係していると考えたため、展葉期の6月に葉の枚数が様々なロゼット個体を20個体ずつ各集団で選び、総葉面積を測定した。計測した個体は地上部が全て枯れた10月に掘り起こし、鱗茎の乾燥重量を測定した。その結果、どの集団でも総葉面積と鱗茎の乾燥重量との間に強い正の相関が見られた。個体が蓄えた資源量について集団間で比較するため、総葉面積と鱗茎の乾燥重量で単回帰を行い回帰直線の傾きを検定したところ、集団間で傾きに有意差はなかったものの、千歳の回帰直線の傾きが最も小さかった。この結果から、開花臨界サイズの集団間の違いは栄養成長時に1年間で蓄える資源量の違いと関連している可能性が示唆された。


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