| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-166  (Poster presentation)

京都市近郊二次林におけるアラカシの種子生産と種子食昆虫の影響
Seed production of Quercus glauca and effects of seed-eating insects on the seed production in secondary forests near Kyoto City

*池本拓真, 平山貴美子(京都府立大学)
*Takuma IKEMOTO, Kimiko HIRAYAMA(Kyoto Prefectural University)

 温帯域の森林を構成する重要な樹種であるブナ科樹木の種子は、大型で栄養に富んでいることから開花後より様々な昆虫に加害されることが知られている。ブナ科のコナラでは、鱗翅目やゾウムシ類といった様々な種子食昆虫の中で特にハイイロチョッキリ成虫の吸汁・産卵が種子生産を大きく減少させ、その年変動に寄与していることが明らかとなってきている。京都市近郊二次林では、コナラやアベマキが優占する落葉広葉樹林からアラカシやコジイが優占する常緑広葉樹林へ遷移が進行しており、種子生産に対する種子食昆虫の影響の違いもその一因となっている可能性がある。そこで、本研究では常緑性のコナラ亜属アラカシの種子生産や生存率に種子食昆虫が与える影響や、種子生産特性を明らかにすることを目的とし、京都市近郊のブナ科樹木混交割合が異なる2林分(宝ヶ池丘陵林山:多種混交・密度高,京都大学上賀茂試験地:コナラ優占・密度低)において,アラカシの季節的な雌繁殖器官の落下量や種子食昆虫による加害パターン、堅果生長フェノロジーを調べた。
 2年間の調査の結果、両林分ともアラカシの雌繁殖器官の生存に及ぼす影響が最も大きかった脱落要因は未熟脱落で,次にハイイロチョッキリの吸汁やタマバチの加害が続いた。ハイイロチョッキリの吸汁はコナラと同時期の7月前半から8月後半にかけて見られたが、コナラ堅果に比べアラカシ堅果の生長は遅く、生存に与える影響はコナラよりも小さくなっていた。タマバチの加害は果皮に虫こぶが形成されるもので、子葉の体積を減少させるのみとなっていた。両林分とも雌花数とタマバチ加害を除いた成熟健全堅果数には有意な正の相関が見られた。以上の結果から、アラカシは種子食昆虫の影響をあまり受けず開花量に応じた成熟健全堅果が多く落下していると考えられ、落葉広葉樹のコナラに比べて種子生産性が高いことが示唆された。


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