| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-171  (Poster presentation)

一回繁殖型植物の開花当年葉の役割 -多年生植物と一年生植物の比較-
The roles of current leaves of flowering individuals in monocarpic plants - a comparison between annual and perennial plants -

*松窪祐介, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Yusuke MATSUKUBO, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

 北海道や本州の落葉広葉樹林の林床に生育するオオウバユリ(Cardiocrinum cordatum var. glehnii)は一回繁殖型多年生草本である。種子から発芽後は、数年から十数年の栄養生長段階を経た後、開花に至り開花年に枯死する。栄養生長段階では、ロゼット葉による光合成を通じて資源を地下の鱗茎に貯蔵する。地上部は毎年枯死するが、次年度はこの鱗茎の資源をもとに葉を展開し、同様に光合成を行い鱗茎に資源を貯蔵する。これを繰り返すことで鱗茎が徐々に年々大きくなっていく。しかし、一回繁殖型植物では開花に至った個体は次年度に“生存”することはないため、当年葉により光合成で獲得した資源は“繁殖”のためにのみ使われると考えられる。そこで本研究では、オオウバユリの開花個体の当年葉は種子形成のための資源獲得の役割を担っていると仮説を立て、開花個体に様々な摘葉実験を施し、種子形成の比較を行った。
 摘葉処理は、北海道大学構内に生育する開花段階のオオウバユリ約90個体を対象に行った。処理の時期は、開花前(蕾形成期)にあたる7月上旬と、開花直後にあたる7月中旬の2つを設定した。摘葉量は各個体あたり25%・50%・75%・100%の4段階の群を設け、それぞれの葉を切除した後に形成された果実の乾燥重量を計測した。各群の果実重を多重比較したところ、開花前に50%以上摘葉した群と、開花後に75%以上摘葉した群に対照群と比べて有意な果実重の減少を確認した。一方、開花前の摘葉処理は、形成される花数には影響していなかった。このことから、オオウバユリは前年度までに鱗茎に蓄えた資源を用いて開花に至るが、種子は開花当年の葉で合成される資源により形成されていることが明らかになった。したがって、開花当年葉は種子形成における資源合成に大きな役割を果たしていることが確認された。本発表では、一年生植物のヒマワリの栽培実験結果と合わせて報告する。


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