| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-182  (Poster presentation)

シャジクモ属2種における発芽特性の解明:温度・光条件の検討
Elucidation of germination characteristics in two species of Chara: Investigation of temperature and light conditions

*伊東樹明(東邦大学), 西廣淳(国立環境研究所, 東邦大学), 加藤将(新潟大学)
*Tatsuaki ITO(Toho Univ.), Jun NISHIHIRO(NIES, Toho Univ.), syou KATO(Niigata Univ.)

車軸藻類は、全国的に減少・消滅している大型淡水藻類である。地上から個体が消失した場所でも、卵胞子は散布体バンクとして残存している可能性が示されているため、発芽条件を解明すれば、散布体バンクによる効率的な再生が可能であると考えられる。本研究では、車軸藻類の発芽特性を明らかにすることを目的とし、植物の休眠・発芽に重要であることが知られている温度・光に着目した室内発芽実験を行った。
温帯の季節変化を模した高温-低温条件、および4℃から36℃にかけて徐々に温度を上昇/下降させる条件を検討した。また季節と水深の違いを模して12時間ごとに異なる温度を与える交代温度条件について多数の組み合わせを設定し、発芽率を比較した。さらに、光の影響を見るため、実験処理のそれぞれの温度で、明条件、暗条件を設定した。
ケナガシャジクモは、低温を経験後、20℃→10/30or25/35℃の温度を経験し、もう一度冷処理を行った後、20℃→10/30or25/35℃の交代温度とした処理(ともに明条件)で、92.5%と84%の高い発芽率が確認された。シャジクモは、5℃の低温処理を30日間与えた処理では一部の卵胞子、80日の低温処理では、適した温度条件(20,23,27℃)において、約90%の高い発芽率が確認された。明・暗条件に違いは無かった。
ケナガシャジクモは2回以上冬の低温(5℃程度)を経験した後、さらに春(20℃)を経験した後に高温を含む日変動のある温度条件を経験することで、発芽が促される傾向にあることがわかった。これは、夏~秋に卵胞子が散布され、1サイクルを越える季節を経験してから、水深の浅い水域で夏季に発芽する性質であると解釈できる。シャジクモは、十分に低温を経験した後、20~27℃に曝さると発芽が促されることが分かった。これは夏~秋に卵胞子が散布され、冬季に低温を経験した後、20~27℃を経験できる浅い水域が発芽に適していることが示唆された。


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