| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-186  (Poster presentation)

ヨシ(Phragmites australis)におけるウラン及び重金属(Fe, Mn)蓄積への内生細菌の関与
Elucidation of uranium and heavy metal (Fe, Mn) accumulation mechanism in Phragmites australis influenced by root endophytic bacteria

*中本幸弘(筑波大学・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境), 春間俊克(筑波大学・生命環境, 原子力機構), 土山紘平(筑波大学・生命環境), 小原義之(原子力機構), 福山賢仁(原子力機構), 福嶋繁(原子力機構)
*Yukihiro NAKAMOTO(Univ. of Tsukuba), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Toshikatsu HARUMA(Univ. of Tsukuba, JAEA), Kohei DOYAMA(Univ. of Tsukuba), Yoshiyuki OHARA(JAEA), Kenjin FUKUYAMA(JAEA), Shigeru FUKUSHIMA(JAEA)

 近年、休廃止鉱山において植物や微生物を利用した浄化方法が処理コストや廃水量の削減等の観点から注目を集めている。本研究調査地である日本原子力研究開発機構人形峠環境技術センターでは、鉱さいたい積場に坑水を一時貯留後、水質改善処理を行って河川に放流している。本たい積場の坑水にはFeやMn及び238U、Raが含まれ、抽水植物のヨシ(Phragmites australis (Cav.) Trin. ex Steud.)群落が成立している。ヨシは重金属を蓄積することで水質浄化を行うことが可能な植物種として知られているが、具体的なメカニズムに関しては未だ不明な点が存在する。
 重金属を蓄積する植物は、根に生息する内生微生物の存在により、植物が重金属耐性を高め、高濃度に蓄積することができるという知見がある。そこで本研究では、鉱さいたい積場における坑水の自然浄化機能に関与している可能性があるヨシを研究対象植物とし、内生微生物の関与を考慮した重金属元素及び238Uの蓄積機構を解明することを目的とした。ICP-OES及びICP-MSによる植物体内の元素濃度を測定した結果、ヨシはFe及びMn、238Uを節根に高濃度蓄積していた。ヨシ節根におけるFeの局在部位を観察したところ、ヨシ節根の表皮細胞と側根の部分にFeを蓄積していることが判明した。またヨシの節根から内生細菌を分離し、重金属耐性に寄与する化合物であるシデロフォアの産生能を確認した結果、分離された菌株のうち、約88%の細菌にシデロフォア産生能が確認された。シデロフォア産生能を有する細菌がヨシ節根に高頻度で生息していることから、ヨシにおけるFeやMn、238Uの蓄積に関与している可能性が示唆された。現在、ヨシより分離した内生細菌をヨシ滅菌実生に接種する接種試験を行い、ヨシの重金属元素及び238Uの蓄積機構への内生微生物の関与を精査している。


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