| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-189  (Poster presentation)

暖温帯二次林林床における樹木18種のシュート形態に基づく受光戦略
Light interception strategies in relation to shoot structure of 18 tree species in a warm temperate forest understory

*久保貴寛, 長田典之(名城大学)
*Takahiro KUBO, Noriyuki OSADA(Meijo University)

【背景・目的】
森林には形態の異なる多種の樹木が共存している。特に林床は光量が少ないため、受光の効率を高めるような選択圧が樹木に対して働いていると考えられる。樹木は葉で光を受けるため、葉の自己被陰を減らすことで受光の効率を高めることができる。林床環境において、直立シュートでは葉柄を長くすることで葉の自己被陰が減少するが、斜行シュートでは枝や葉柄を長くすることで葉の自己被陰が減少する。このことから、直立シュートの種(以下、直立種)はより長い葉柄が必要であるのに対し、斜行シュートの種(以下、斜行種)はより長い枝が必要であると予想される。本研究では、葉の自己被陰を減少させる戦略である枝の仰角の種間差に着目し、林床に生育する樹木17種について当年生シュートの形態と受光効率(シュートの乾燥重量あたりの受光量)を測定した。
【方法】
愛知県豊田市自然観察の森に生育する直立種6種、斜行種11種を対象とした。感光性フィルム(オプトリーフ)を用いて夏季におけるシュートの葉の受光量を測定し、枝の仰角(水平面からの角度)、枝長、葉柄長、総葉面積、シュートの乾燥重量を測定した。
【結果・考察】
当年生シュートについて、直立種では総葉面積が大きい種ほど葉柄長が長い傾向がみられ、斜行種では11種中10種で総葉面積が大きい種ほど当年枝長が長い傾向がみられた。このことから、葉の自己被陰の減少において、直立種では葉柄長が大きく寄与し、斜行種では枝長が大きく寄与していると考えられた。また、主成分分析の結果、枝の仰角や葉柄長の種間差は総葉面積や乾燥重量の種間差と対応していた。受光効率は直立種・斜行種で違いがみられなかった。以上より、総葉面積が大きい種は枝を直立させて螺旋状に葉を配置することで葉の自己被陰を減少させるが、面積の大きい葉やそれを支えるための丈夫な枝や葉柄をもつためにシュートに多くのバイオマスを必要とすると考えられた。


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