| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-190  (Poster presentation)

3年生ダケカンバ産地試験林での形態形質の産地間および試験地間変異
Morphological variations of seed origins and test sites on provenance tests of 3-year-old birch.

*荒木響子(筑波大学), 廣田充(筑波大学), 後藤晋(東京大学), 津村義彦(筑波大学)
*Kyoko ARAKI(Tsukuba Univ.), Mitsuru HIROTA(Tsukuba Univ.), Susumu GOTO(Tokyo Univ.), Yoshihiko TSUMURA(Tsukuba Univ.)

 近年、地球温暖化が進んでおり、今後の気温上昇が樹木の形態形質に何らかの影響を与える可能性があり、その影響評価をしておく必要がある。樹木の表現型は、本来保有する遺伝的変異、生育環境によって適応的に変化する環境変異、その交互作用で決定する。本研究では気温の上昇に敏感に反応すると考えられる亜高山帯の代表的な樹木であるダケカンバを用いて産地試験を行い、形態形質の表現型への産地間変異(遺伝的変異)、試験地間変異(環境変異)から温暖化の影響を明らかにした。さらに、表現型における環境変異の寄与率から温暖化の影響の大きさを明らかにすることを目的として実施した。
 研究材料であるダケカンバの果穂(種子)は天然分布をほぼ網羅した日本全国11産地から採取し、3年間、東京大学北海道演習林で育苗した。その後、つくば(年平均気温:13.9℃)、八ヶ岳(同:7.1℃)の2か所の試験地にそれぞれ183本、単木混交でランダムに植栽し、産地試験地を設定した。調査は、葉フェノロジー(開芽・紅葉フェノロジー)、成長量(苗高・地上10㎝直径)、葉の形態(葉面積・乾燥重量)の調査を行った。また各試験地で秋に生存判定を行った。
 つくば試験地では、八ヶ岳試験地と比べて開芽期の早期化、紅葉期の遅延による生育期間の拡大がみられ、それに伴い成長量も大きくなった。葉の形態についても、八ヶ岳試験地を上回る結果となった。また産地間では、つくば試験地において高緯度の産地ほど開芽期が早く、苗高、葉面積、及び乾燥重量が大きいという有意な緯度傾度が見られたことから、ダケカンバに南北方向の地理的クラインが存在することが示唆された。形態形質における各変異において葉フェノロジーで環境変異が表現型の約9割を占めたことから、環境の影響が強く温暖化の影響を受けやすいことが示唆された。


日本生態学会