| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-191 (Poster presentation)
森林において隣接する樹冠同士の境界に帯状の隙間が観察されることがある。これは樹冠の譲り合い(Crown shyness 以下CSと表記する)とよばれ、風によって樹冠同士が衝突し、枝葉が損傷したり芽の成長が抑制されたりすることにより形成される。CSは個体内でも形成されることがある(Intra-crown shyness 以下ICSと表記する)。ICSの形成は枝葉の自傷的な損失と樹冠面積の減少をもたらし、当該個体にとって利益がなく、なぜ形成されてしまうのか分かっていない。また形成されるICSの程度には個体によって差がある。そこで本研究では、京都市東山のツブラジイを対象に、ドローンによる空撮により、ICSの定量とその形成に関わる樹木の形態の特徴を明らかにすることを目的とした。どのような樹形特性がICSの幅に関連するのかを、重回帰分析によって解析した結果、ICSの幅は枝の直径と負の相関をもち、枝の長さと正の相関をもつことが分かった。細長い枝は風の影響を受けてしなりやすいために樹冠の動きが大きく、より幅の広いICSが形成されたと推察する。樹形は過去の成長の積み重ねや隣接個体との競争により決定されるため、枝の伸長成長が優先され相対的に細い枝をつけた場合、樹冠の自傷作用が生じICSが形成されてしまうと考えられる。