| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-192 (Poster presentation)
水や栄養塩などの土壌資源は空間的に不均質に存在し、その効率的利用は植物にとって重要である。空間的に不均質に分布する資源の効率的な獲得が、匍匐枝の導管を通じて栄養塩や水が移動するクローナル植物では見られる。さらに、維管束形成層では二次的に導管が発達するので、生育環境の資源量に応じて資源輸送効率は変化する可能性がある。また、ラメットから生じる匍匐枝数が増加すると、匍匐枝あたりの資源移動量が減少し、導管面積が変化する可能性もある。そこで本研究では、生育環境の資源量や、匍匐枝の分枝が導管面積と資源輸送効率に与える影響を栽培実験で検討した。
クローナル植物のカキドオシ(Glechoma hederacea)を材料に、親ラメットから2次匍匐枝を形成させ、匍匐枝の本数と、生育時の水分条件を要因とする栽培実験を行った。匍匐枝を切断しないように、親ラメットから9番目の子ラメットが生産されるまで栽培し、刈り取り、分解し、匍匐枝の長さと、各ラメットの乾燥重量を測定した。親ラメットから1・3・5・7番目の匍匐枝断片の包埋と切片化を行い、匍匐枝切片の顕微鏡画像から導管面積を測定し、導管の資源輸送効率を算出した。
成長過程で匍匐枝が経験した水量が多いと、導管面積が有意に大きく、資源輸送効率も高くなった。高い資源輸送効率により齢の若いラメットの利用できる水量が増加し、成長や繁殖に有利になる可能性がある。2本の匍匐枝とも給水が少量だと、匍匐枝が1本のときと比べ、親ラメットから子ラメットの匍匐枝で導管面積が有意に小さかった。導管面積が小さいと、資源輸送効率は低くなり、分枝した条件下では資源移動のコストが大きい可能性がある。