| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-193 (Poster presentation)
街路樹はCO2吸収、大気汚染物質の吸着など様々な機能を果たすことが期待されている。しかし都市にみられる様々な環境ストレスは光合成機能低下をもたらし、街路樹としての機能を損なう恐れがある。そこで京都市内を調査地とし、都市の環境ストレスの中でも大気汚染に注目して、交通量の違いにより汚染レベルが異なる4カ所の地点間の光合成機能を比較した。2020年度の調査対象は京都市内に多く植栽されている高木である、イチョウ、トウカエデ、ソメイヨシノの3樹種とした。光合成機能測定はLi-6400 XT(LI-COR社)を用いて行い、各種光合成パラメータを算出した。京都市が提供する気象や大気環境に関するデータも参照した。
その結果、イチョウに関しては交通量の多い地点で光合成速度は低くなり、交通量が少ない地点では光合成速度は高くなった。ソメイヨシノは交通量が多い方から2番目である1地点で他の3地点よりも光合成速度は低くなった。トウカエデについては交通量の増加に伴って気孔コンダクタンスが減少したが、最大カルボキシル化速度が増加し、光合成速度に地点間の差異は認められなかった。水利用効率はソメイヨシノでは交通量の多い地点ほど高くなる傾向があったが、イチョウとトウカエデについては交通量との相関は見られなかった。
以上の結果より、大気汚染レベルの違いは、イチョウについては光合成速度に影響を与え、ソメイヨシノについては水利用効率に影響を与えていることが示された。また、ソメイヨシノの光合成速度は、他の2つの樹種に比べてどの地点でも高い値となり、交通量の増加に伴って水利用効率が増加していることからストレスへの敏感な応答を持っている可能がある。これらのことから、2020年度においてソメイヨシノは、街路樹として効果的にCO2吸収を行ったと考えられる。