| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-196 (Poster presentation)
稚樹は火災に対して特に脆弱な段階にある。火災で地上部を失った稚樹は地上部を再生しなければならないため、地下部での資源の貯蓄が大きな役割を果たす。非構造性炭水化物(デンプンと糖類)と貯蔵タンパク質(窒素)は火災で地上部が損失した後の萌芽再生のエネルギー源や新しく作る組織の構成成分である。本研究では、火災耐性種は地下部への非構造性炭水化物と窒素の配分が相対的に高いと予想し、火災非耐性種の稚樹との比較を行った。
調査はタイ東北部サケラート環境研究ステーション(14°30’N, 101°56‘E)で2019年9月13日から9月27日に行った。ステーション内には乾燥フタバガキ林と乾燥常緑林が存在し、乾燥フタバガキ林では11月から3月にかけての乾季の終わり頃に毎年火災が起こるが、乾燥常緑林では起こらない。乾燥フタバガキ林の優占樹種4種を火災耐性樹種として、乾燥常緑林の優占樹種4種を火災非耐性種として選び、樹高30cm以下の稚樹を対象に8種計72個体のサンプルを採取した。サンプルは、地上部と地下部の乾燥重量を測定したのち、非構造性炭水化物と窒素の濃度を測定した。
単位地上部重量あたりの地下部の重量および、非構造性炭水化物・窒素の現存量は、火災耐性種で有意に高かった。また、単位重量あたりの地下部重量は、どの個体サイズにおいても、火災耐性種が火災非耐性種を上回る結果となった。一方で、地下部における非構造性炭水化物と窒素の濃度については、火災耐性種と非火災耐性種の間に有意な差は認められなかった。地下部資源濃度の季節的変動の可能性については本研究では考慮されておらず、今後の課題としたい。