| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-199  (Poster presentation)

林床植物21種における根形質とアーバスキュラー菌根菌感染率の種間変異
Variation in fine-root traits and arbuscular mycorrhizal colonization across 21 understory plant species

*佐久間夕芽, 佐藤莉咲, 富松裕(山形大学)
*Yume SAKUMA, Risa SATO, Hiroshi TOMIMATSU(Yamagata Univ.)

植物の適応戦略や環境変動への応答を理解するための手がかりとして、機能形質がある。葉では機能形質の種間変異がよく調べられており、植物の成長戦略がLMA(単位面積あたりの重量)を中心とする形質で特徴づけられる一つの軸に沿って整理できる。根形質に関しても種間比較が行われており、葉よりも系統的保守性が強いことや、形質の種間変異が栄養獲得戦略の違いを反映することが示唆されている。しかし、分析に用いられた植物の種数は葉に比べて少なく、林床植物はほとんど含まれていない。また、約80 % の植物が菌根を形成しており、栄養分の獲得に菌根菌が関わっているが、比較的簡便に測定できる形態形質に比べると、菌根菌感染率のデータは限られている。本研究では、宮城県の夏緑樹林に生育する林床植物22種を対象として、根形質(4つの形態形質とアーバスキュラー菌根[AM]菌感染率)の種間変異を分析した。その結果、分枝頻度とSRL(単位重量あたりの長さ)で強い系統的保守性が見られた。主成分分析の結果、第1主成分にはAM菌感染率と平均直径、分枝頻度、SRLが大きく寄与していた。根が細い種ほどAM菌感染率は低いが、分枝頻度が高く、SRLが大きい傾向があり、これらの形質間には強い相関関係が見られた。すなわち、根を長く伸ばして分枝させ、栄養塩を積極的に探索する戦略から、栄養塩の獲得を菌根菌に強く依存する戦略まで、第1主成分は植物種による栄養獲得戦略の違いを反映していると考えられた。この結果は先行研究と一致しており、林床植物においても同様の形質スペクトルが存在することが示された。また、本研究で観察された形質の種間変異は、世界規模で植物を比較した研究に匹敵するほど大きかった。森林内の限られた面積において栄養獲得戦略に大きな種間変異が見られたことは、多くの植物種が共存できるメカニズムに関与している可能性がある。


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