| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-208  (Poster presentation)

衛星リモートセンシングにより検出された日本のブナ林の過去21年間の春期晩霜害
Late spring frost damage in Siebold's beech forests in Japan detected by satellite remote sensing during the past 21 years

*青野葉介(東北大学), 野田響(国立環境研究所), 彦坂幸毅(東北大学)
*Yosuke AONO(TOHOKU Univ.), Hibiki NODA(NIES), Kouki HIKOSAKA(TOHOKU Univ.)

春の晩霜は森林にダメージを与えるが、温暖化による霜害頻度への影響は研究者によって予測が分かれる。温暖化により樹木の開葉と終霜はともに早くなるとされる。霜害は開葉が終霜よりも早くなると増加し、逆の場合には減少すると予測される。本研究では、日本のブナ林の過去21年間の衛星データをもとに、年、標高、緯度が霜害頻度に与える影響の解析を行った。
 日本国内のブナ林300地点について、Terra/Aqua MODISによる観測データから過去21年間(2000~2020年)の3~6月のNDVI(正規化植生指数)を用いた。年ごとに通算日とNDVIの関係をロジスティック式で近似し、2回微分が最大の日(開葉日)と最小の日(展葉終了日)の間を展葉期間と定義した。展葉期間中に5日以上連続でNDVIが低下しているケースを霜害とし、霜害頻度を目的変数、年・標高・緯度を説明変数としたロジスティック回帰を行った。また、終霜日と開葉日についても、それぞれを目的変数とした解析を行った。終霜日はMODISデータの夜間地表面温度が0℃以下である最後の日とした。
 その結果、霜害頻度は年との間に負の相関がみられ、標高と相関せず、緯度との間に正の相関がみられた。終霜日は年と相関せず、標高および緯度との間に正の相関があった。開葉日は年および標高との間に正の相関があり、年と標高の正の交互作用もみられたが、緯度とは相関がみられなかった。
 これらの結果は、開葉日は予想に反して年経過とともに遅れ、この効果は高標高ほど大きく、終霜日は変化していないことを意味する。霜害頻度は年経過とともに減少していた。高標高ほど開葉日も終霜日も同程度遅かったため、標高による霜害頻度の変化はなかった。緯度による開葉日の変化はなく、高緯度ほど終霜日が遅いために霜害頻度が高かった。
 霜害頻度は高緯度ほど高くなる傾向にあり、温暖化によって減少していると結論される。


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