| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-215  (Poster presentation)

バイオチャー散布が樹木細根動態に与える影響
Effect of biochar application on fine root dynamics in the forest ecosystem

*竹内宏太, 塩手文也, 今吉健斗, 吉竹晋平(早稲田大学)
*Kota TAKEUCHI, Fumiya SHIOTE, Kento IMAYOSHI, Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

温室効果ガス削減のための低コストな炭素隔離の方策の一つとしてバイオチャーの森林散布の有効性に注目が集まっている。しかし、森林生態系へのバイオチャー散布による影響の研究は主に地上部に焦点が当てられており、地下部の樹木細根を対象とした研究は少ない。そこで、本研究は森林生態系へのバイオチャー散布が樹木細根動態に与える影響を明らかにすることを目的とした。

本研究は埼玉県本庄市に位置する暖温帯コナラ林で行った。バイオチャーの施用量が異なる3種類(0,5,10 t/ha)の施用区を用意し、細根動態の違いを比較した。細根の観察には土壌にスキャナーを挿入し、土壌断面を撮影してその画像から細根を観察する手法であるスキャナ法を用いた。撮影は2019年11月から2020年11月の間に9回行った。スキャナ法で細根領域面積、細根消失面積、細根の太さ、細根の分岐数の測定を行った。その結果から細根の相対的な増加量(生産率)、細根の単位長さあたりの分岐数を算出した。同時に影響の原因を解明するために仮比重、土壌含水率、pH、無機態窒素イオン濃度、全窒素全炭素量の測定も行った。

本研究で用いたスキャナ法では観察できた細根の量のばらつきが非常に大きかったため、バイオチャー施用量の違いによる細根領域面積、細根消失面積、細根の分岐数の比較は難しかった。細根の太さはバイオチャーの散布量に伴った傾向はなかった。一方、有意差はなかったものの細根の相対的な増加量(生産率)はバイオチャーの散布量の増加に伴って上昇する傾向があった。また、同様に有意差はなかったものの、細根の単位長さあたりの分岐数はバイオチャーの散布量の増加に伴って減少する傾向があった。これらの細根動態の変化については、先行研究の結果や本研究で行った土壌解析の結果から、土壌中の窒素やリンなどの無機栄養塩類濃度の変化が影響している可能性が考えられた。


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