| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-217 (Poster presentation)
ヒ素は自然由来の有害元素として建設発生土から検出されることが多い。建設発生土は、工事に伴うセメント混入によりアルカリ化していることがある。汚染土壌の対策手法として物理化学的な方法が主流となっているが、低濃度・広範囲な汚染現場では、ファイトレメディエーション(植物を用いた浄化技術)が注目されている。建設発生土のようなアルカリ性のヒ素汚染土壌に対する植物の応答を調べた例は少ない。またヒ素の化学形態はpHに依存することが知られている。そこで、本研究の目的は、アルカリ性の自然由来ヒ素汚染土壌を対象としたファイトスタビライゼーション(植物による安定化)の適用可能植物の探索である。対象植物として、ヨモギ、シロツメクサ、タイムを用いた。これらはヒ素およびアルカリ条件への耐性が確認されており、また緑化植物としても汎用性が高い植物である。
ヒ素を含む水耕液(pH6)で植物を栽培し、ヒ素の存在下での異なる植物種間におけるヒ素の吸収特性と根圏におけるヒ素の化学形態変化を比較した。また、異なるpH(6, 8)のヒ素汚染土壌における植物栽培実験を行い、アルカリ条件の土壌における植物のヒ素吸収特性と植物根圏のヒ素の化学形態変化を調べた。
水耕実験からは、ヨモギおよびシロツメクサの植栽によって根圏でヒ酸が亜ヒ酸に形態変化したことが示唆された。タイム植栽下ではヒ素の形態変化が確認されなかった。土耕実験では、アルカリ性のヒ素汚染土壌における植物根圏のヒ素の化学形態変化が、シロツメクサとタイムで認められた。タイム植栽下では、土壌中水溶態ヒ素濃度が有意に減少しており、ヒ素が化学的に安定化したことが示唆された。また、タイムは他種と比べて、アルカリ性の土壌におけるヒ素の地下部への蓄積能力が高かった。これらの結果から、タイムがアルカリ性のヒ素汚染土壌に対するファイトスタビライゼーションへの適用性が高い植物であることが示された。