| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-224 (Poster presentation)
温帯二次林の森林発達に伴う光の垂直・水平方向の不均一性の変化
松尾 智成(ワーゲニンゲン大学)、 小林 慧人(京大・農・森林生態)、 日浦 勉(東大・生圏)、北山 兼弘(京大・農・森林生態)、 小野田 雄介(京大・農・熱林)
光は樹木の成長にとって最も重要な資源である。森林内で、光は不均一に分布している。光の空間的な不均一性は、垂直分布と水平分布に分けて解釈できる。光の垂直分布は樹木間の光獲得競争の強さを表し、自己間引きや垂直方向の森林発達に影響する。また、光の垂直・水平分布は樹木種間の光の空間的な棲み分けに寄与し、多種共存に重要である。このような林内の光の不均一性は、二次遷移に伴い大きく変化し森林動態にも深く影響するが、詳細に解析された事例はほとんどない。
そこで、本研究では冷・暖温帯林の林齢の異なる12と5つの森林プロット(20×20m)で、毎木調査と林内の光分布の測定を行った。そして、林内の光の垂直分布と水平分布が気候帯ごとに林齢とともにどのように変化するのか、またどのような森林構造の要素が光の空間的分布に効いているのかを評価した。
光は林冠上部から急激に減衰し、林床では5%未満であり、若齢林でやや高い傾向があった。垂直方向の光減衰率は林齢とともに緩やかになる傾向があり、冷温帯林に比べ、暖温帯林の方が垂直方向の光減衰は同一遷移段階において緩やかであった。光の水平方向の不均一性は林齢とともに大きくなる傾向があり、気候帯間で顕著な違いは見られなかった。個体の平均樹冠深の増加に伴い垂直方向の光減衰率は増加し、光の水平方向の不均一性は減少した。
遷移初期では、林内の光の減衰率が速いが水平方向の不均一性は小さく、光獲得競争がより強く、自己間引きや垂直方向の森林発達の促進が示唆された。遷移後期では、林内の光の減衰率は遅いが水平方向の光の不均一性は大きく、ギャップなど水平方向の光の棲み分けを介した共存の促進が示唆された。