| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-226 (Poster presentation)
台風などによる大規模撹乱後に一斉更新をした森林は、自己間引き過程を経て森林構造が空間的に均質化していく。一方で、老齢な森林は空間的に不均質な構造が特徴であり、老齢化の過程では密度非依存的な枯死によって不均質化が進行すると考えられる。この均質化から不均質化への推移過程は、ほとんどわかっていない。本研究は、1959年の伊勢湾台風による大規模風倒後に一斉更新した森林にて、2004年と2019年の間での、個体の生残と成長、密度および収量の変化を比較し、局所的な均質化と不均質化の過程を明らかにした。
調査地は、長野県茅野市にある亜高山帯針葉樹林に2004年に設定した2つのサイト(それぞれに50 x 50 m2調査区が2つ)で、シラビソとオオシラビソが優占している。2004年の樹高1.3 mが以上の個体の生死を2019年に記録し、生存個体では胸高直径(DBH)を測定した。各調査区を25個の10 x 10 m2の小区に分け、小区あたりの密度と平均個体サイズの関係を解析した。
2004年から2019年に、7350本から3426本まで個体数は減少し、2004年のDBHが10 cm 以下の小型個体の多くは枯死した。生存個体のDBHのサイズ分布のL字型から一山型への変化は、小型劣勢個体の枯死による自己間引きの進行を示唆する。しかし、小区に注目すると、積算胸高断面積値が減少した小区も多く、局所的には、密度非依存的な大型個体の枯死が生じたことを示唆する。両対数軸上に表した密度と平均個体サイズの、2004年と2019年の2点間の傾きが、自己間引き過程で期待される-1.5に近い値を示す小区が多い一方で、-1付近の値を示す小区も見られた。この結果は、自己間引きが進行中の場所とほぼ終了した場所が混在していることを示す。