| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-227  (Poster presentation)

三宅島2000年噴火火山灰堆積地における一次遷移に伴う表層土壌の理化学性の変化
Changes of physical and chemical of surface soil properties during primary succession on the tephra of Miyakejima island eruption in 2000 years

*神野城, 田村憲司, 新谷尚己, 浅野眞希, 上條隆志(筑波大学)
*Jo JINNO, Kenji TAMURA, Naoki SINTANI, Maki ASANO, Takashi KAMIJO(Tsukuba Univ.)

【目的】三宅島2000年噴火により,大量の火山灰による堆積地が形成された.このような土地では,一次遷移に限りなく近い火山遷移が進行する.これまでに,三宅島では遷移と土壌との関係性に関する研究が行われてきたが,多くの報告では植生の発達程度や火山灰堆積年代の異なる地点間を比較した手法を取っており,火山遷移に伴う土壌諸性質の真の変化を捉えたとは言えない.そこで,本研究では,火山灰堆積地における10年間の火山遷移の進行に伴う土壌の諸性質の変化を明らかにすることを目的とした.
【試料および方法】調査地点は,三宅島旧村営牧場内に設置した新谷(2011)が2009年に行った調査地点である.2009年においては,調査地の植生はハチジョウススキが優占種として生育していたが,植生の発達程度は低く,裸地に近い状態であった.調査地に5m四方のコドラートを設置し,100分画したサブコドラートからそれぞれ表層土壌試料を採取した.採取した試料を風乾,篩分け後,一般理化学性の分析に供試した.
【結果および考察】本調査地点は2009年と比較し,植物株の発達や株数の増加といった植生の発達が確認さ,植物根量の増加が確認された.土壌中の有機炭素量・全窒素量は2009年より増加し,特に2009年からの増加量は2009年前よりも高くなっていた.pH(H2O)は5.24と酸性状態であったが,2009年よりも高くなっており,土壌pH値の増加が見られた.交換性Ca2+は2009年から減少していた.さらに,コドラート内の水溶性Ca2+,SO42-量との間に高い相関性がみられ,さらに非常に類似した空間分布が示されたため,石膏の溶出が示唆された.また,植物根量は有機炭素量・全窒素量と有意な正の相関性を示した.一方で,pH(H2O),交換性Ca2+との有意な相関性は見られなかったが,それぞれ火山ガスの排出量の減少,石膏固結層中の成分の溶脱と関係があり,火山遷移の進行に影響していると考えられた.


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