| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-228 (Poster presentation)
近年、管理放棄された里山二次林では、種多様性の低下や外来種の侵入など、様々な問題が発生している。本研究では、里山二次林の植生動態を把握することを目的とし、兵庫県南部の放棄里山林とそれに隣接する遷移後期照葉樹林の林縁部と林内(山頂部)にそれぞれ2つずつプロットを設置し、林分構造の違いから植生遷移について考察した。
落葉樹の胸高断面積合計は、二次林の林縁部では約3分の1を占めていたのに対し、その他の林内および照葉樹林では15%以下に留まった。また、陽樹性の常緑樹であるソヨゴ、ウバメガシ、ヤマモモが二次林の林縁部と林内に同程度の割合で優占したのに対し、二次林の林内から照葉樹林林縁部にかけては優占度が低かった。照葉樹林構成種であるコジイの胸高断面積合計は、二次林の林縁部から照葉樹林の林縁部にかけて優占度が高くなった。
各プロットの垂直構造を比較した結果、二次林の林縁部は様々な樹高の落葉樹より構成され、陽樹性の常緑樹が侵入しつつある複雑な垂直構造を示した。一方で、林内の低木層の本数密度は低かった。照葉樹林の林内では低木層のほとんどを常緑高木の幼稚樹が占めていたのに対し、林縁部では落葉樹もみられ種多様性が高かった。
これらの結果から、種子供給源となる遷移後期林に隣接する放棄里山林における遷移の進行について考察した。定期的に伐採が行われ、落葉樹が優占していた放棄里山林は、管理放棄に伴い陽樹性の常緑樹が侵入し、林内が暗くなることで低木層の落葉樹が枯死し、低木層が一旦衰退すると考えられる。その後、常緑樹が定着し、低木層における常緑樹の優占度が高くなる。成熟した照葉樹林では、ギャップの形成などにより落葉樹が侵入し、低木層の種多様性が再び高くなることが示唆された。