| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-231 (Poster presentation)
熱帯林の地上部バイオマス(AGB)は撹乱後数十年で成熟林水準まで回復するとされ、この考えの下、伐採が行われてきた。しかし、実際の伐採後の熱帯林では、林床や林冠がシダやツルの群生(密生マント群落)に被覆されてAGB回復が停滞し、二次遷移が中長期的に阻害された地点が林内に広く分布している。このような森林回復の停滞が将来的に生態系の安定的な利用を脅かすことは明らかであり、その駆動要因を解明することが急務であるが、現状、密生マント群落の成立要因についてはほとんど理解されていない。本研究では、マレーシア・ボルネオ島の森林管理区において、現地調査及びリモートセンシング技術を用いた空間解析を行い、密生マント群落の分布及びその成立要因としての伐採履歴を評価した。
2019年に約600haをUAVで撮影した写真を教師に用い、Landsat衛星画像を5種類の植生(森林、ツル、シダ、裸地、水域)に分類する機械学習モデルを作成し、衛星画像に外挿することで2019年製の植生図を作製した。得られた植生図に対し、30年分のLandsat衛星画像を用い、伐採後に回復した地点(森林植生)と回復していない地点(密生マント群落が被覆)にどのような履歴の違いがあるのか、伐採強度(伐採量、伐採パッチ面積)と伐採前の森林発達度に注目した時系列解析を行った。
勾配ブースティング決定木モデルを用い、全体精度84.5%の植生分類モデルが得られ、高精度の植生図が作製された。時系列解析の結果、過去に行われた伐採の強度は、現在の植生が①シダ、②ツル、③森林(順調に回復している地点)の地点の順で高く、また密生マント群落が形成された地点では、伐採前の森林が未発達であることが明らかになった。本研究より、強度伐採や十分な回復期間を取らずに伐採を繰り返すことが、密生マント群落成立(=二次遷移の停滞)の要因となる可能性が示唆された。