| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-238  (Poster presentation)

倒木の腐朽型が樹木実生の倒木上更新に与える影響
Effect of wood decay type on tree seedling regeneration on coarse woody debris

*北畠寛之, 深澤遊(東北大学)
*Hiroyuki KITABATAKE, Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)

腐朽した倒木は森林内の生物多様性に大きく貢献しており、そのひとつに樹木の更新場所としての役割がある。倒木は菌類の分解力に応じて異なる腐朽型を示す。腐朽型は白色腐朽、褐色腐朽などがあり、倒木上の実生定着に影響を与える。腐朽型の違いは、材の物理化学性や微生物群集の違いを反映するが、これらのうち何が樹木実生の成長に影響するのかはよくわかっていない。本研究では、腐朽型の異なる材および土壌を基質としたポット試験により、腐朽材の養分濃度や微生物群集が樹木実生の成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行った。ポット試験の基質は白色腐朽材、褐色腐朽材、土壌の3タイプでそれぞれ滅菌・非滅菌の処理区を設けた。樹種は先行研究から倒木上で実生が記録されているスギ、ヒノキ、ダケカンバ、シラビソの4種を用いた。基質の養分イオン組成・pH 、実生の成長量を測定し、基質や滅菌・非滅菌処理間の成長速度の差を比較した。さらに成長速度が受ける影響についてモデル選択を用いて解析した。また、非滅菌処理区において、基質の生物的影響を知るために菌類群集をリボソームDNAのITS1領域のメタバーコーディングにより調べた。
スギ、ヒノキ、ダケカンバの3種の成長速度では基質・処理間に有意な差がみられた。モデル選択の結果、スギ、ヒノキの成長速度は主に養分で説明でき、ダケカンバでは養分、基質の種類、滅菌の有無から説明できることがわかった。このことからスギ、ヒノキでは腐朽型による化学的組成の違い、ダケカンバでは腐朽型による化学的組成と微生物群集の違いが腐朽型選好性に影響している可能性が示唆された。また、菌類群集構造は基質間で有意に異なっていた。外生菌根菌や植物病原菌のOTU数も基質間で有意に異なっていたことから、実生成長への影響が考えられる。発表では実生の成長と現在解析を進めている菌類群集構造の結果を合わせて考察する。


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