| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-244  (Poster presentation)

都市域における多自然川づくりに関する検討 ー野川を例としてー
A study on Nature-oriented River works  in Urban Areas:The case of Nogawa River

*ウシメイ, 倉本宣(明治大学)
*Ximei WU, Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

  都市における河川整備は、防災を中心として、河川をコントロールする方針によって進められてきた。治水上は一定の成果をあげてきたものの、その代償として、河川の自然環境や景観に大きな負の影響を与えてきた。このような状況を踏まえ、2006年に「多自然川づくり」が始まった。「多自然川づくり」は河川と景観の調和、自然な河岸、水際部の形成などに配慮したものとなっている。
  野川では東京都の西南部を流れる河川として、都市再生に重要である。2010年から、野川においても東京都によって、多自然川づくりが始められ、2020年には神明橋周辺に進んでいた。住民も河川環境への関心が高く、流域内に「野川流域連絡会」が設置された。本研究は野川を一つの例として、工事箇所周辺でアンケート調査を行い、住民による工事後の現状認識と河川工事に対する希望を明らかにすることを目的とした。
  本研究の結果からは、周辺住民の河川に対する希望という側面から見ても、自然への配慮と回復が重要であることが示された。住民から「自然の豊かさ」への評価が高かったと同時に、「自然・みどりの改善」への希望も高かった。また、「水質」への評価が低かった。野川流域は森が崎水再生センターの処理区として下水道普及率がほぼ100%に達しているにもかかわらず、水質は十分に回復していなかった。夏には瀬切れが発生し、流量の不足が、水質の悪化をもたらしていると考えられる。近年の気候変動によって短時間強雨が増加し、無降水日数は増加する可能性が指摘され、中小河川の整備工事では都市における降雨パターンに配慮する必要がある。
  周辺住民の意向を反映して、河川の機能を多面的に検討して新たな価値をみいだし、真に「多自然」といえる新たな水辺環境を作ることが今後の課題となる。


日本生態学会