| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-245 (Poster presentation)
維管束着生植物(以下着生植物)は、樹木などの植物体に固着して独立栄養を営む植物群を指し、自然林や巨樹上、雲霧的環境を好んで生息するとされる。日本の照葉樹林を構成する維管束植物種の重要な構成要素であり、絶滅危惧種も多い。本研究は、着生植物が多数生育し、海洋性気候のため低樹高で着生植物を比較的観察しやすい伊豆諸島において、着生植物の生息場所を種数と絶滅危惧種数から評価し、保全上重要度が高いと考えられる地点を可視化することを目的とした。評価する環境要因としては、植生タイプと標高を用いた。調査地は大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、八丈小島とした。ルート沿いの着生植物を目視で観察し、発見地点と種名をGPSで記録した。収集した分布及び踏査データはQGISを使用し、100m×100mにメッシュ化した。同様に、標高及び植生データをメッシュ化した。全島における着生植物の種数、絶滅危惧種数に関係する環境要因を明らかにするため、分布データを応答変数、標高および植生タイプを説明変数としたGLMM、GLM解析を行った。調査の結果、踏査地点は7,143メッシュ、確認地点は1,128メッシュとなり、東京都選定の絶滅危惧種13種を含む、25種の着生植物を確認した。解析の結果、伊豆諸島における着生植物は、高標高域で、一定以上の高さのある樹林(植生タイプ)において種多様性が高いことがわかった。さらに、絶滅危惧種数が最も多かった御蔵島で、絶滅危惧種数が多いと予測された場所と環境省の自然公園地域区分を比較したところ、一致していない場所が見られ、自然公園区域は着生植物の保全には十分とは言えないことが示された。