| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-248  (Poster presentation)

植生データベースに基づく日本産植物の生態学的指標値の算出とその応用可能性の検討
Calculation of ecological indicator values of Japanese plants based on the vegetation database

*岡野航太郎(東京農工大・院), 近藤博史(東京農工大・院), 則行雅臣(東京農工大・院, 中外テクノス株式会社), 星野義延(東京農工大・院)
*Kotaro OKANO(Tokyo Univ. of Agri. & Tech.), Hirofumi KONDO(Tokyo Univ. of Agri. & Tech.), Masaomi NORIYUKI(Tokyo Univ. of Agri. & Tech., Chugai Technos Corp.), Yoshinobu HOSHINO(Tokyo Univ. of Agri. & Tech.)

 植物種の生育適地の評価と各地点の環境条件の把握には、生態学的指標値が有用であることが知られている。生態学的指標値は生育地特性に基づく、植物種の生育環境の指標値であり、出現種の指標値を平均することで地点の環境条件の比較にも用いることができる。しかし、生態学的指標値はヨーロッパ以外の地域に生育する植物種群に対しては定義されていない。よって、他の地域において生態学的指標値を利用するためには、既存のデータから指標値を算出する汎用的な方法の開発が必要である。
 そこで本研究では、環境省の自然環境保全基礎調査に基づく全国植生調査データベースとそれに付随する現地調査データ、気候平年値から算出した環境変数を用いて代替的な生態学的指標値の算出を行い、その妥当性の検証と応用可能性の検討を行った。
 まず植生調査DBに出現する維管束植物5152種について、種ごとに指標値を算出した。この値とヨーロッパの既存の指標値の間には土湿や気温の指標などで正の相関関係が確認された。
 種の指標値と種組成に基づく地点の環境条件の推定においては、気温に関連する指標値で値の再現性が高いこと、算術平均によって地点の環境条件を推定した場合に実際の値と推定値の間の相関関係が強くなることが確認された。一方で、環境条件の過大評価や過小評価を減らす推定方法としては、出現時の被度による加重平均が適していることも示唆された。
 以上から日本においても代替的な生態学的指標値の算出は簡便な方法で実現可能であり、その指標値に基づく地点の環境条件の推定が妥当であることが確認された。特に種の分布モデルにおける新しい環境変数として用いるなどの応用が期待される。また今回の結果は、観測値が存在しない地域あるいは時代における地点の環境条件が、その地点の植物種組成の情報に基づいて潜在的に推定可能であることを示している。


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