| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-249 (Poster presentation)
東南アジアの熱帯林は生物多様性が高く、固有種も多いホットスポットである一方で、その全容の解明には至っていない。インドシナ半島では上部が標高1000-1400 mの台地形の山地が点在するが、そこには特殊な地形を反映し、地域固有種も多い。本研究では東南アジアの中で最も植物相の調査がなされていない国の一つであるラオス南部のボラベン台地において、標高傾度に沿った定量的で網羅的な植物相調査を通して得られたデータを基に、出現植物の生活型別の種多様性や、種組成、系統的多様性を把握することを目的とした。
調査ではボラベン台地の標高158 m、223 m、455 m、545 m、1248 mの5地点において100 m×5 m(10 m×5 mのサブプロット10個)のベルトトランセクトを設置し、出現した植物全種を記録し、樹高4 m以上の樹木については樹高とDBHを個別に記録した。ボラベン台地の森林構造は、①低地(158 m, 233 m)では大木は少ないが若齢木が高密度で生育して全体としてバイオマス量が少ない、②中標高(455 m, 545 m)では若齢木が少ないが大径木が散在するために全体のバイオマス量が多い、③高地(1248 m)では若齢木から成木まで密に生育してバイオマス量も多い傾向がみられた。4 m以上の樹木は全体で69科155属238種が確認され、低地と高地で種多様性が高く、中標高で低いパターンを示した。先行研究の多くでは標高傾度に沿って種多様性が減少するパターンや中標高で最も高くなるパターンが示されている。ボラベン台地における中標高域の種多様性の低下は、急峻な斜面及び強い乾燥が種の分布の制限要因となっている可能性が考えられた。4 m以上の樹木の種組成は標高傾度に沿って連続して変化しており、極めて妥当な結果であった。発表では、さらに現在解析中の樹木以外の生活型別の多様性パターン、系統構造、種組成についても議論する。